小説

□Forever Swear to You
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「うああっ…チャニョ…ラぁっ」





「ベクっ……あっ…ハアッ…」










ーーーーこんなことして

何になるんだろうって



思わないわけじゃないーーーー











……途切れる息の中

チャニョラが耳元で囁く。






「ベク…愛してる」





「……僕も」









どんなに愛し合っても

こうして身体を重ねても



僕たちには"未来"がない……










「……チャニョラ…」






ーーーー別に

女になりたいわけじゃない。







でも僕が男である限りーーーー


僕たちに"終着点"はない。







………愛する者同士が結ばれる




ーーーー"結婚"という名の


終着点が………。









ーーーーーーーーーー







ーーーー次の日の夜も



こうして当たり前のように
身体を交わす。






「チャニョラ…う…あっ」





「っハァ…ベク…っ」






愛しい………



すごく愛しい。









こんなにも
チャニョラのことを愛して、
愛されているのに。





どうして僕たちには

未来がないんだろう………

















ーーーー全てを終えた後

ベッドに倒れ込むと同時に



涙が頬をつたった。







「…ベク!?どうした!!?

…ツラかった…!?」









「…………ねぇ…チャニョラ……


僕たち…悪いことしてるのかな………」







そう小声で言うと





チャニョラが僕の身体を座らせて

真っ正面に向かい合わせた。




チャニョラが真剣な瞳で
口を開く。





「悪いことなんか、してない」






「…っだって……

いくら愛し合ったって……

神様は助けてくれない………」






ーーー祝福してくれない。






涙が次から次へと
頬をつたう。






「僕たちの未来って……

何があるの………?」






何が待ってるっていうの……?










「………ついて来て」









ーーーーーーーーーー







外は真っ暗。



時計はもう0時をまわっていた。




……こんな夜中に

一体どこへ行くつもりなのだろう………






チャニョラに連れられて
タクシーをひろい

どこかへ向かっている。






「どこ行くの」







そう聞いても
答えてはくれない。








ーーーー窓を開ければ、
夜風が気持ちよかった。




夜空を見上げれば、
星が輝いていた。





ーーー人と同じように

心地いいものや美しいものに
心を許すことはできるのに




僕は……僕たちは





どうして"愛"の形が
人と違うのだろう



同性同士で…

どうして惹かれ合ってしまうのだろう…







性別を越えて……

どんなに愛し合っても




世間から見れば

ただの"奇物"でしかないーーーー








こんなに苦しいなら
やめてしまえばいい








……そう思ったこともあった






でも……



今、僕の手をギュッと
握っているこの手が……

この身体が……

この瞳が
僕を引き留めてしまう……







僕はそれに応えてしまう。










変えられない。



離れられないんだ………



自分の気持ちに嘘がつけない。






チャニョラのこと

こんなにも…こんなにも……



愛してるから…







ーーーーーーーー





「ベク、降りて」



「ここって…」







着いた場所は、

教会。






ーーーーどうしてこんなところに……?






そう思ったけど


チャニョラに連れられるまま
タクシーを降りる。












「ちょっ……チャニョラ…

勝手に入って見つかったら
怒られちゃうよ…!?」




「大丈夫、大丈夫」








そう言って
僕の腕を引っ張って

門をくぐり
重い扉を開け


中に入る。














「ーーーーーキレイ……」





ステンドグラスから差し込む
月の光で

薄暗い聖堂の中は
青白い光で照らされていた。





「ベク…こっち」






チャニョラが優しく手をひいて
僕を聖堂の奥の方へ連れる。


そして
神像の前の戒壇をのぼり

僕を上がらせようとした。












「…っだめだよ……ここは…」







「どうして…?」










「だって…ここは

結婚する人同士が……


男の人と女の人が……

神様に祝福される場所だよ…?」







ーーーー僕は……男。







チャニョラとここに登ることなんて……

できない。



誰も…許してはくれない……








ーーーまた涙が溢れる







「いっそ……

僕が……女に生まれてこれば……」




「ベク!!」







チャニョラが僕の言葉を遮るように





僕を強く抱きしめた。
















「…俺は

ベクが女だったらよかったとか
思ったこと
一度もない。


……確かに女だったら…

みんなに祝福されて、結婚もできて……
子どもだってできたかもしれない。」






僕を抱きしめたまま
言葉を続ける






「でも……今

こうやってね…?ベクと一緒にいられて
一緒にいることだけで……

俺は十分幸せ。



ベクは…男の俺に恋をして

俺は
男のベクに恋をしたんだ。


どんなに反対されても
こんなにも愛し合える人

他にいる……?」












チャニョラが再び
優しく僕の手をとる。


僕の瞳からは
涙がとめどなく溢れていた。








「……あがって…ベク」








たったの一段……





この戒壇を2人であがることが

僕たちにとって
途轍も無く大きな意味をもつ………








慎重にこの一段をあがる。
















「……どうしよう、チャニョラ…」







「大丈夫……俺たちしかいないよ……?」








「……神様が…見てる……」










聖堂の一番奥に立つ
神像が…僕たちをじっと見つめている。






ーーーーー"汚らわしい"






……きっとそう見られている。











……ごめんなさい、ごめんなさい…




許してください……











「ベク……俺の顔見て……」






涙と不安でいっぱいの瞳で
チャニョラの顔を見上げる









「俺……誓うよ。


一生、ベクのこと大切にする。

一生、世界中の誰よりも
ベクを愛すよ。




だから……俺と……



結婚してくれますか……?」








えーーーー………?









「俺たちが結婚しても……

形には何一つ残らないけど……


俺たちの心の中で

ずっとずっと
大切にし続けるものにしたい……」









ーーーそして……



チャニョラがしっかりと僕を見つめて
再び口を開く。









「ビョン ベクヒョン……

貴方は……

健やかなる時も…
病める時も…

パク チャニョルを
永遠に愛することを

誓いますか……?」






ーーーーもう、

許しなんて


僕たちには必要ない。





必要なのは……


僕たちの心で永遠に生き続ける
僕たちだけの真実。









「……誓います」






そして
今度は僕が………










「パク チャニョル……

貴方は
健やかなる時も
病める時も………

ビョン ベクヒョンを
永遠に愛することを……

誓いますか……?」














「……誓います」












ーーーこんな夜中に
誰もいない教会で……



静かに永遠を誓うことしかできない。



……それすらも
本来ならば
許してもらえない。







それでも……


僕たちは誓った。



許しを得られない神に……


互いを永遠に愛することを……。

















「……誓いのキスを」







そう言って
チャニョラが僕の頬に手を添える。


チャニョラの吸い込まれそうな程に
綺麗な瞳が
真っ直ぐ僕を見つめる。









「ベク……愛してる…」






「…僕も………」










優しく
優しく……

唇を重ねた……









ーーーー誰にも
認められなくたっていい。





誰にも…神様にも……

許されなくたっていい。






僕らはそれでも


この誰もいない夜の教会で



永遠を誓い
結婚した……。






……それだけでいい。


僕とチャニョラが……

結ばれたってこと



心に残る

その二人だけの真実だけで……。







青白い光が

僕たち2人を包み込んだ……









Fin.

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