小説

□Heart Hidden Hearts
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______





翌日………




そんなつもりはなかったのに


俺は無意識にも

……いや、意識的に…

チャニョリを避けていた。




昨夜、自分の放った言葉が
耳に響く。





"ちょっとは
俺の気持ちも考えてよ!!!!"




ーー何言ってんの俺…



俺の気持ちも考えて
とか……



そんな
勝手な俺の気持ちなんか


チャニョリ、知るわけないのに。




俺が勝手に想って、悩んで

ただ…それだけのことなのに。


俺、ほんとバカ……





「……」


チャニョリも俺が避けていることに
気づいてる。



どうしてこんな行動にでてしまうのか
自分でもわからない。



でも……

言葉を発したら

全てが消えてしまう気がした。


嫌われる気がした。






…その時……



ーーガチャ…



俺が1人で逃げ込んでいたはずの

楽屋の扉が開いて…


…上手く避けていたつもりなのに



楽屋にーーー

チャニョリが入ってきてしまった。





「……こんなとこにいたんだ」



「…、……」




…どうしようもなくなったこの状況……


俺は思わず椅子から立ち上がった。





…すると
チャニョリは
俺を真っ直ぐに見て言った。



「昨日ーー…

しつこく聞いたのが嫌だったんなら…
…ごめん、謝る………

でも俺…
ベクに隠し事されるの

すごく…辛い……」






チャニョリが俺に近づく。



「…話してよ……、な…?」




俺を見るその瞳は

優しくて…
淋しそうで……




俺は…いつも
自分のことでいっぱいいっぱいで

勝手なことばっかりして
チャニョリを傷つけて

本当に最低。


いつも明るくて騒がしい
チャニョリだけど…

人一倍周りに対して
気を遣うヤツだってこと

俺が1番、
分かってるはずなのに。




「……っ、」




それでも……
俺は口を開くことはできない。





ーーー怖い。


誰にも話した事のない
この"異常"な想いを

自分の口に出して認めるのが。



チャニョリに…

俺が"異常"なヤツだって
…思われるのが……。




俺は下を向いたまま
チャニョリの瞳を
見ることができなかった。





すると……




「……そんなに…

俺に話すことが…
俺と口を聞くことが嫌……?」




えーーーー………




「…わかった。

俺のせいだもんな……もういい」




……違う………


違うよチャニョリ………




「しつこく聞いて…ごめんな…」




チャニョリが楽屋を出て行こうと
背を向けて扉へ向かう。





ーーやだ…違うのに……



そうじゃないのに……




…まって………


行かないでチャニョリ…




…、行かないでよ……!





「………っ、行くな バカ!!!」






ーーー扉のノブに
手をかけたチャニョリが…


突然の叫び声に身体を止めた。





「……違うの…っ、

口を聞きたくないんじゃないっ…!!」





ーーチャニョリが振り向く。







「俺はっ…

お前が……


チャニョリのことが…



……好きなんだよぉっ…!!!」










………







ーーー……伝えてしまった。




もう…全部終わり。



自分から
嫌われるようなこと
更に重ねる俺って…

……ほんとバカだよね…。




ーー無言で扉の前に立ち尽くす
チャニョリに向かって言った。




「…気持ちわるいだろ?

だから…言いたくなかったの。


チャニョリと話をしたら…
伝わってしまう気がしてたから…」





……しっかりとチャニョリの瞳を見て…


この頃チャニョリに
ちっとも見せてなかった

精一杯の笑顔で…




「…今までごめんね


…仲良くしてくれて

………ありがとう……」






ーー伝えたかったこと


全部言えた。




………涙が出た。





いたたまれない恥ずかしさのあまり
顔が紅くなっているのがわる。





「…っ、じゃあ俺……

外出るから……」




下を向いて、顔を伏せて

足早にチャニョリの隣を通り




扉に手をかけた
その瞬間……







「ーー…俺以外のヤツに見せないでよ」




「…!?」



チャニョリの大きな手が
俺の細い腕を掴んでいた。





…何ーーー

……今…なんて………?






ーー言葉の意味が分からずに
瞳を潤ませたままの俺の…


その腕を掴んでいる
チャニョリの手が


グッと…俺を引き寄せて……



俺の身体は

…チャニョリの大きな身体に包まれた。





「…っ、!?/////…チャニョ……

……どういう…」




「…こんな可愛い泣き顔……

俺以外に見せないでって意味」






……嘘………



何………どうして…………





「…まってよ…っ、…俺…」



チャニョリが
俺の言葉を遮るように

抱きしめた俺の頭を
自分の胸にくっつけた。



そしてーーー小さな声で囁いた……





「ベク、反則…

そんなこと言われたら


俺、もう…制御できなくなる…」





えーーーー…………






「ずっと…ずっと前から…


ベクだけ…

…お前だけしか見てない。



…………好きなんだ……」







ーーーーーー信じられない………




チャニョリが……今……………





「……う…そ……、…」



「…嘘じゃない」





ーーー信じられない言葉に

どうしたらいいか分からず……


俺はチャニョリの腕の中で
鼓動を高ぶらせた。





「どんなに好きでも…

ステージ上で

ファンの前でしか
ベクを抱き寄せること
できないって……


ずっと…そう思ってたのに……」





ーーーチャニョリが
少し身体を離して

…俺をみつめた。




「俺がどれだけ

ベクが好きなのか


……知ってる…?」




…優しい笑顔。




俺の頬には
…気がつけば…

大粒の涙がつたっていた。




「…俺…わかんない…
チャニョリ…っ、////


…どうしたらいいのっ…?」





「…ベク……

もう一回

……"好き"って言って…?」








ーーーーー絶対に…絶対に

気持ちが通じるなんてこと
…ないと思ってた。



…嫌われると思ってた。



のに……




今…俺は

その愛しい人の胸の中にいる。




こんなにも大きな愛に包まれている。





ーーー俺は

チャニョリの大きな背中に
腕をまわして……


初めて…チャニョリを
ギュッと抱きしめた。




愛しい気持ちが……

こんなにも
溢れ出る。





「…どうしようっ…好き……っ

チャニョリ……好きだよぉっ…////」





俺は……
今、言葉にできる
精一杯を伝えた。




「……俺も…ベクが好き…

誰にも渡したくない……」




チャニョリも
俺を抱きしめる。




ーーそして……





「……ねぇベク……

キス…していい?」





「…!?…え…チャニョ……っ、」




……俺の返事を聞く前に


俺の唇を塞ぐかの様に

チャニョリは


優しく…唇を重ねた……。





「…っ、/////………はぁっ…

チャニョ…リ……」





ーーー恥ずかしさと
胸いっぱいの幸せで…

俺の頬は紅く…瞳は潤む。




「…そんな可愛い顔するから…
いけないんだよ…」




「だって…っ/////」




「ガマンできなくなる……」




「……っん、………/////」




…再び

チャニョリが…唇を重ねてくる。




そして……
ギュッと抱きしめられる。



ーーー暖かい……



…チャニョリ……



……もう

メンバーだとか

男だとか

そんなこと
関係なかった。





ーー…隠してた心の裏に
隠されていたのは

こんな…
最高の幸せだったみたい…





きっと
この瞬間…

世界一幸せなのは
俺なんじゃないかなって

本気で思うくらいの………







「ーーーベク……大好き…」




優しい声が……

チャニョリの腕の中で


俺の心の中いっぱいに響いた…。






________







ーーー毎日毎日…


たくさんのステージをこなす俺たち。



たくさんのファンのみんなに囲まれて…



そんな中でも毎日

変わらない大切なことと

変わっていく新たなことがあって…



ーーそして…

あの日以来も

変わらずに

ファンの目の前で
俺を抱き寄せるのはチャニョリで



変わったのは

その俺たちの
心の奥ってことに……


…誰か気づく人はいるのかな……?






……今日も

ファンのみんなの前で

俺たちが
一緒にいたとしたら…



それが
ただのファンサービスなのかどうかは…



きっと、誰にも分からない。




その心の裏に

どんな気持ちが
隠されているかなんて……



誰も

知ることはないんだからーーー…。






Fin.
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