小説

□Tea For Two
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リビングの
テーブルには

ふたつのティーカップが並んでいる。





……俺はソファーに座って
その内のひとつを手にとった。





「どう?カイ

…美味しい?」




「うん
美味しいよ」





リビングと隣接するキッチンからの
ギョンスヒョンの声に

当たり前の様に答える。





「お茶の葉のブレンドをね、
変えてみたの」





口の中に
紅茶にブレンドされたフルーツの香りが
ふんわりと広がる。








「ヒョンの淹れるお茶って

いつも…優しい香りがする」






ヒョンは何も言わないけど
俺にチラッと目をやった後

嬉しそうな微笑みを浮かべながら
キッチンで手を動かしていた。









…………




ティーカップを置いて
俺はソファーに横になった。



キッチンにいる
ギョンスヒョンを見つめる。






……何だか…


すごく幸せな気分。







「〜…♪」





キッチンから


小さな鼻歌と
レシピを繰り返し読む声が
微かに聞こえてくる。






そして………

レモンとバニラの香り。








ーー俺はソファーから立ち上がり
ヒョンに近づいて…



手を動かすギョンスヒョンを

……後ろからギュッと抱きしめた。






「……何作ってるの?」




「ん〜?カイの好きなもの」





そう言って
また鼻歌を歌いだすヒョン。






「……このまま作るのもいいよね」




「…これじゃ動きにくいよ」






……俺は

そう言って笑うヒョンの頬に




後ろから抱きしめたまま

優しくキスをする…








「……ヒョン…


……好き…」







ーーそんな俺の言葉に


何も言わず

少し頬を赤らめて
小さく頷くヒョン…。






愛しい気持ちが

溢れ出る……










「…お茶……まだある?

飲みたいな」







……ヒョンが紅茶を
ふたつのカップに注ぐ。










ーー窓から差す
午後の淡い光の中……



そして

レモンとバニラの香りの中……






…再び

優しい香りが





ふたりの
口の中いっぱいに広がった。










Fin.

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