からふるでいず
□雨の日
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外は夏場特有の大雨が降っていた。
「じゃあ、今日はこれで解散!」
幸村君の一言でミーティング室から出て行く部員たち。
雨のせいでテニスコートが使えず、今日はミーティングのみとなった。
そしてミーティング開始から2時間たった今も、雨が止むどころか、弱まる気配もない。
「柳生」
「あ、すみません。今出ますね」
柳君に名前を呼ばれて我に返る。
「今日の鍵当番は柳生だな。よろしく頼む」
「はい。では、アデュー」
生徒昇降口とは真逆の職員室を目指し歩いていった。
***
鍵を返し終わり、いざ帰ろうと、昇降口で靴を履き替えていると外に見慣れた姿があった。
「・・・あの、どうしたのですか?白神さん」
同じクラスの隣の席。
おまけに素行が悪く風紀委員でも問題児扱いを受けている。
恐る恐る声をかけると、彼女は柳生を睨んだ。
「なんでもない。柳生には関係ねぇだろ」
「帰宅部のあなたがこのような時間まで残っているなんて珍しいですね。もう6時過ぎてますよ?」
柳生が構わず続けると、白神はさらに声のトーンを落として言った。
「いちゃ悪ぃのかよ・・・。はぁ、帰る。お前と話すと疲れるからな」
そう言って彼女は、雨の中に一歩踏み出そうとしていた。
「待ってください!」
「んだよっ!」
「はぁ、傘、ないのでしょう?」
「・・・だったら」
「一緒に帰りましょうか。送ります」
「いい」
「駄目です。拒否権はなしですから。それに女性に風邪を引かせるわけにはいきません」
「本当に柳生って面倒くさい奴だな」
「そういうあなたも十分面倒くさいですよ。ほら、帰りましょう」
柳生はそう言って白神の手を引いた。
彼女は本当に素直じゃない。
気持ちを伝えられない私も、ある意味おなじかもしれませんね。
「あなたはもっと素直になってください」
雨の日に神様がくれたチャンス。
【雨の日】