からふるでいず
□ラストチャンス
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柳side
我が立海テニス部部長、幸村精市が亡くなったと言う知らせを受けた。
今日は精市の葬儀。
学校からは、代表してテニス部レギュラーが来ていた。
精市は昨日の帰り、大型トラックに轢かれて亡くなったらしい。
そこには丸井、仁王…そして赤也がいた。
目の前で精市の最期をみたのだ。
精神的ダメージが俺たちより大きい。
その3人はただ呆然と遺影を見つめていた。
俺は何と声をかけたらいいか、わからなかった。
暫らくして、大体の葬儀が終わったあと、俺たちテニス部は誰一人話すことなく椅子に座っていた。
ただ赤也だけは幸村の遺影の前に立っていた。
「赤也のやつ、泣かなかったな」
そうだ。
赤也だけは、泣いていない。
「きっと、受け入れることが嫌なんでしょう」
「“泣く=幸村の死を受け入れる”と思ってるんじゃな」
俺は無言で赤也を見つめた。
「赤也、帰るぞ」
「………ッス」
真田が声をかけると、赤也が何か呟いた。
突然、地面に膝をついて何かを呟いた。
「赤也?」
「部長…俺、まだ幸村部長に勝ってないっすよ…」
とても小さな声で、そう言った。
「まだ、アンタ、を倒してない。俺は、ビック3倒、してNO.1になるんだ…」
俺は赤也の前にしゃがむ。
泣いていた。
「…なのにッ、なのに…何で、逝っちゃったんすか!」
全員が下を向く。
赤也の気持ちが痛いほど伝わってくるから。
「まだ、約束、果たしてないっすよ…幸村部長…」
「赤也…」
「来年、俺の活躍みてくれるんじゃないんすか?…高等部では、無敗でまた、今のメンバーで、三連覇狙うっていったじゃないっすか‼」
泣きじゃくる赤也の頭をそっと撫でるしかできなかった。
突然すぎる仲間の死を、誰ひとりとして、受け入れることが出来なかった。