からふるでいず
□恋愛方程式
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俺は、データ集めと計算が得意だ。
しかし、最近、不得意なものがある。
君に関する“データ集め”
君に関する“計算”だ。
俺が得意としていたこの2つが君の前では上手く出来ない。
「柳、私のデータは簡単にはとらせないよ」
「ああ、なかなかとらせてもらえないな」
いつもなら話し相手が言うことを予測して先に言うことが出来るが、君の前で一度も成功したことがない。
「・・・苦手だな」
「知ってるよ。柳は他人の心理を探ることは得意だけど、自分の心理に関わると一気に苦手になる。・・・そうでしょ?」
そう言った後、「恋に方程式があったら楽なのかもね」と付け足した。
「・・・ああ。悠にはなんでも見透かされてるな」
「恋の方程式か、それは便利だな」と呟く。
「当然。君の事は誰よりも見ているからね」
悠の言動に驚きつつも、切れ長な眼をずっと見つめていた。
本心を誰にも悟らせないような瞳に、自分が映し出されていた。
「ふふっ、じゃあ私はこれで」
止める隙もなく去っていった彼女に、自然と笑みがこぼれる。
ひとつ、データが取れた。
彼女は、自分の気持ちを隠すことが得意らしい。
「まったく…。俺の気持ちが届くのはまだまだ先になりそうだ」
恋に計算なんか必要ない。
【恋愛方程式】