からふるでいず

□君のいた席
1ページ/1ページ








「…本当にもうおらんのか」








「仁王、まだ言ってんのかよぃ」







俺が見つめる席は、空席。







その席の主、白神悠は所謂、不登校ってやつで。





そんな彼女が亡くなったという知らせを受けたのは昨日のことじゃった。







生前の彼女に俺は一度だけあったことがある。









・・・・・・・・・屋上・・・・・・・・









いつも通り、サボるために屋上に行った。








重い扉を慣れた手つきで開くと、そこには見慣れない姿があった。

 







「お前、誰じゃ?」









「え?ああ、あんたと同じクラスだよ」






「・・・白神か?」







「ご名答。不登校少女の白神悠です」








「ほぉ、柳からきいとったがこんなところにおるんか?」








「今日は気まぐれ」












面白い奴じゃ。












「次はいつ来るんじゃ?」










「さぁね、明日も来るかもしれないし、当分来ないかも」









白神は子供のように悪戯な笑みを浮かべた。










「じゃあ、明日も…ここに来んしゃい。待っとるけん」







彼女はこちらを見て一瞬笑った。






そして屋上から去った。









そして、その日の帰り道、大型トラックに轢かれて、死んだ。











「ちゃんと、来たぜよ?白神に会うためだけに」







それなのにお前さんの姿は何処にも見当たらない。
 






俺の脳裏には、あいつの笑顔が焼きついとった。









最初で最期となってしまった、あの誰よりも綺麗な笑顔が。










神様、白神を返してくんしゃい。




















 
 そう何度も願っていたけど、君の居た席は、空席のまま。









【君のいた席】

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ