生徒会執行部からの果たし状

□序章
2ページ/9ページ




朝、教室の私の机の中に一通の手紙が入っていた。
ちなみに私が通う咸波(みなは)高校は全館土足なので、下駄箱なんてものは無い。その代わりに机の中に入れる事が多い。――何がって?もちろんラブレターですよ。
ラブレターならば、ついに来たか!私のモテ期!!とか考えるが、そもそも私にモテ期なんて絶対に来ないのだから有り得ないのだけれど。
けれど、机の中に入っていたラブレター(もどき)はピンク色に可愛らしい花があしらわれている。そう表は。裏側を向ければこれが何かようやくわかった。


果たし状


可愛らしい封筒には不似合いな筆で書かれた文字でそう書いてあった。
はい?どういう事??
脳内フリーズしていたら、聞き慣れた友人の声がしたので現実に戻す。

「おはよースズ!何その手紙……って果たし状!?」

だが、手紙――もとい果たし状を隠す事は出来なかった。声をかけたのは幼稚園からずっと一緒の親友、菖蒲(あやめ)馨(かおり)。私はオリちゃんと呼んでいる。

「あんた……こんな古風な奴に喧嘩売ったの?」

呆れたように(実際に呆れているだろうが)言うオリちゃん。見られたならしょうがない。私はしらばっくれるのを諦めた。

「私こそ知りたいよ。ザ、平均な私に果たし状だなんて……オリちゃん知らない?」

「私に聞かないでよ……。スズ、中身は見たの?」

「まだー」と言えばさっさと見なさいと急かされる。見ようとしたらオリちゃんが来たのだ。見る暇は無い。オリちゃんは私の事をスズと呼ぶ。私をニックネームで呼ぶのは親友のオリちゃんだけだ。

「え〜と……、『早河美鈴様。あなたに決闘を申し込みます』……」

「果たし状送る奴だからどんなのかと思ったけど丁寧ね。相手」

「オリちゃん喋らないで。クラスメイトにこれがばれちゃう。『尚、決闘期日についてはそちらが決めて貰って構いません』」

「ふむふむ……『決まりましたら生徒会室までお越しください。お待ちしています。……生徒会執行部一同』……えぇ!?」

オリちゃんの叫び声が教室内に響く。教室にいた人のほとんどが私達の方を向く。見ているのはオリちゃんの方だけど。
私はこれ以上オリちゃんが錯乱しないよう、制服の袖を引っ張る。すると、我に反ったオリちゃんが回りの人に「気にしないで」と声を掛ければ、皆気にしなくなった。現在、誰一人としてこちらを見ている人はいない。

「スズ……本当に何もやってないよね」

「だから言っているじゃん。外見も能力も普通で平均的な私だよ?」

「そりゃそうだけどさ……」
言い濁るオリちゃん。言いたいことはわかる。あの生徒会から呼び出しだ。果たし状というのを使って。

「とりあえず昼休みに生徒会室行ってみるよ。誰かいるだろうし」

「私もついていくからね!」

「ありがとう。オリちゃんがいれば安心だよ」

私はニッコリと笑顔を浮かべる。
チャイムと同時に担任と副担が教室へと入ってくる。


昼休みまで後、約四時間三十分――
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ