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□【funny sisters】
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1:次女との会話

私には、いわゆる「姉妹」と呼び合う関係のアナザーがいる。
どうしてそうなったのか、どういう相手が姉妹になるのか、その基準も自分ではわかってない。
ノックの音にこたえて玄関のドアを開けると、そこには最初に妹となったアナザーがいた。

「ヨヒラさん、こんにちは」
「こんにちは、楓。そして帰ってください」
「ひどい!待って待って、閉めないで!」

長い水色の髪を持つ彼女こそ、ほぼ同じ時期に生まれた姉妹だ。名前は楓。
どことなく中性的な雰囲気の彼女は今、黒光りする筋肉質な体を惜しげもなく月光の下に晒していた。
そんな相手を、自宅に招く女性がはたしているのだろうか。少なくとも私は招かない。

「私の姉妹にそのような変態はいません!!」
「貧乳に絆創膏だったヨヒラさんに変態とか言われたくない!」
「あれは事故です!!」

意地でも扉をこじ開けようとする彼女と、必死に扉を閉めようとする私で地味な勝負が繰り広げられる。
だけど悲しいかな、筋肉なんてないもやしのような腕の私では10秒もしないで負けてしまった。
魔力だったら負けないのに、と頬を膨らませると、楓は何が面白いか歯を見せて笑った。

「相変わらずのもやしだね」
「うるさいです変態マッチョ。いますぐ帰ってください」
「やだよ。なんのためにこんな辺境まで来たと思ってるの?」
「辺境で悪かったですね」
「そんな辺境で、何してんの?」
「自宅にいることに何か理由が必要ですか?」
「今日からソーウィンだよ?」
「…参加しないと、決めました」

そう言うと、彼女はムッと顔をしかめた。

「せっかくのお祭りなのに?」
「夏の二の舞になるのは勘弁なんです!」
「会場には行かないの?」
「…行ったら参加したくなっちゃいますし」
「へぇ?」

あ、言っちゃいけないことを言ったかもしれない。
そう思った時には、私の腕は彼女に掴まれて引き寄せられていた。
そのまま流れるように担ぎあげられ、楓の肩の上で私の体が不安定に揺れる。
一瞬遅れてその状況を理解し、思わず悲鳴を上げた。

「ひっ!?な、なにするんですか!」
「んー?もうこのまま強制連行しようかなって」
「降ろしてください!おーろーしーてー!」
「あーもー!暴れると危ないよ!」
「暴れるなって言うほうが無理…あっ、せめて鍵かけさせてください!行きますから!降ろして!!」
「うし、言質ゲット」

…そんなわけで、会場に行くことになってしまいました。

【中性的アクティブ少女】

出演:野々原楓様

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