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※流血表現があります。
※苦手な方は要注意!


雨は嫌いだ。
だって、寒いから。
体を丸めて、自分で自分を抱きかかえるようにして、いつも震えてた。
寒くて寒くて死んじゃいそうなのに、実際には死≠ネんてものはなかなか来ない。
ただただ、寒いだけ。それがいつまでも続くんだ。まるで生き地獄。

ざあざあと降りしきる雨が俺の髪を、服を、体を濡らしていく。
少し物思いに耽っていたつもりだったが、結構長い時間立ち尽くしていたらしい。
毛先からぽたぽたと雫が零れる程度には、濡れてしまったようだ。
濡れた髪が額に張り付くのが鬱陶しくて、手のひらで後頭部へと撫で付ける。すると、ベチャ、と不快な音がした。
なんだろう、と手のひらを見ると…そこには雨ではない、赤く粘着質な液体がこびり付いていた。
独特の鉄臭い匂いは、嗅いだことがある。殴られたり、刺されたり、鞭で打たれたりした時なんかに、嗅いだ気がする。
それがどうして、今、俺の手のひらについているのだろう。
俺は、殴られたり刺されたり鞭で打たれたりしてないのに。

「…あれ?」

なんでだろうと首を傾げて、雨に洗い流されていくその赤いものを見つめた。
俺はこれを流していない。流す理由も原因もない。なら、これは誰が流したものだろう?

「ね、君たちは知ってる?これは一体、何なんだろう。誰のもの?」

ねぇってば。
足元にで眠っている人を蹴って、何度も問いかける。だけど返事がなくて、俺はイライラして少し強めにその人を蹴った。
それでも返事はなく、その代わりに俺の足にまたあの赤い液体がついた。それを見て、ようやく俺は合点がいく。

「ああ、なんだ。君のだったんだね、これ」

俺の手から、足から、顔から、髪から、洗い流されていく赤い色。
初めて知った。これは俺以外からでも流れるのだということを。あの人たちはこれを流す俺を見て忌々しそうにしていたから、俺だけかと思ってた。
そうか。俺が変なわけじゃなかったんだ。
じゃあどうして、あの人たちは俺をあんな目で見てたんだろう?

「わっかんないなぁ…」

いい加減雨に濡れるのも嫌になってきて、どこか雨宿りできる場所はないかと周囲を見渡す。
もう夜で、しかも雨を降らす雲のせいで周囲は真っ暗だ。光源は足元で眠っている人が持っていたランプの明かりだけ。地面に転がっていたそれを拾い上げて、その場をあとにする。

「バイバイ。君も早く帰らないと、風邪ひいちゃうよ?」

そう声をかけてみたが、やはり動かないし、返事もない。
無愛想な人、と内心呟いて、俺は完全にその人に興味を失った。

「あ、でも…」

パシャパシャと水たまりを蹴りながら歩いてから、俺は気が付いた。

「足がないんじゃ、帰れないか」

雨に濡れた地面に転がる、腕と足をなくして赤に塗れたあの人のことを少しだけ思い出しながら、俺は歩き続けた。

【lonely envy】
 Chapter 2: affair

腕と足を体から切り離すと、シャワーみたいに赤色が吹き出すなんて。
これも、初めて知ったなぁ。

*
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