炎の蜃気楼/直江受
□弱み
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「か…げと…さ…
行か…な…
行かないで!!!!!」
直江は突然叫びだし、飛び起きたかと思うと、ベットから外に行こうとする。
「直江どうした?直江!!」
ひどく錯乱する直江を高耶は必死で押さえ付ける。
「行ってしまう!
あの人が…
俺を置いていく!!」
元々体格では直江のほうが勝っている。押さえ付けようとしても、すごい力で跳ね返してくる。
「直江…落ち着け…
俺はここにいる!」
「かげ…と…さ!」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、ドアノブを開けようとする。このまま外に出すのは危険だ!
直江は高耶に押さえられながらも、必死で抵抗する。
「かげ…とらさ…景虎さま!!!!!」
「直江!俺はここにいる!!」
「景…虎様!」
一瞬直江の力が緩んだ隙に高耶はぎゅっと直江を抱きしめ床に押し倒した。じたばたする直江を力の限り抱きしめる。
「かげ…!」
高耶は黙って直江を抱きすくめる。きつくきつく抱きすくめる。
「俺はここにいる…!!
直江…
ここにいるから」
直江の目が一瞬正気に戻る。
「か…げと…さま?」
直江が高耶を確かめるように見る。
高耶はまっすぐ直江の目を見た。
「ここにいる…」
直江は震える手で高耶の頬を触りながら感触を確かめる。
「俺はここにいるから」
「ほんと…に?」
「ああ…わかるだろ?」
「かげと…さ」
景虎の体温を確かめるように、高耶の背に手を回した。
「おれ…ゆるし…くだ…
も…どこ…もいかな…で」
その瞬間、直江は再び意識を手放した。
「な…おえ…!」
熱がまだ高い直江をぎゅっと抱きしめる。
いつもは強い直江。
弱音を吐かない。
自分の前ではスマートな大人の男だ。
実はこんなにも弱くて脆い面を隠し持っていただなんて…。
「直江…」
涙の跡の残る頬をそっと指で拭ってやる。
こんなに苦しんでいただなんて…
熱で気が緩み今まで押さえていたものが溢れ出したのだろう。
本人も自覚しないうちに…。
ベットに直江を戻すと、手をそっと握ってやった。
「今日はずっとそばにいてやる」
高耶は赤く腫れた直江の瞼をじっと見つめていた。