炎の蜃気楼/直江受

□それからの空白
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景虎が逝って早2年…。

長秀は直江と松本市内のホテルにいた。

二人は怨霊調伏のために全国を奔走しているのだが、今回は予定が長引いてしまい泊まることとなった。

いつもはシングルを2つ取るのだが、今日は生憎ツインしか空いておらず、二人は同じ部屋で過ごすこととなった。

「ったく…何が悲しくておまえと同じ部屋に泊まらないといけないんだよ。どうせならかわい子ちゃんと泊まりたかったよ」

そう軽口を叩くのは安田長秀こと千秋修平だった。

「それはこっちのセリフだ。仕方ないだろう。空いてなかったんだから。文句を言うな」

落ち着いた動作でスーツを脱ぎながらハンガーにかけているのは直江信綱こと橘義明だった。

「長秀…今日はもう疲れただろう。明日も早いんだから早く休め」

「だー!うるせっ!
俺がいつ寝ようが俺の勝手だろうが!!!!」

めんどくさそうに髪をほどきながら、長秀は服を脱いで風呂場へと向かう。

「ん?これは…」

長秀は洗面台の上に置かれた錠剤を見つけた。
直江が置き忘れたであろうその錠剤を持ち上げて長秀はまじまじと見る。

そのとき直江が洗面台に入って来た。

「長秀まだ風呂に入ってないのか?早く入れ」

そう言いながら直江は長秀が手にしているものに目を見張る。

「そ…それ…」

「直江、どういうことだ」

直江は蒼白な顔で長秀の手から錠剤を奪い取る。

「いや、最近風邪気味でただの風邪薬だ。何でもない」

長秀は直江の顔をじっと見る。

「長秀、なんだ?」

「それ…睡眠薬だろう?」

睡眠薬という単語を出されて、直江は大仰なほど肩を揺らした。

「いつからだ」

静かだが明らかに怒りを含んだ口調で直江に聞く。

「睡眠薬だなんておまえの見間違いだ。
これは風邪薬だ」

「嘘をつくな!!
俺を侮るな直江!!
それが睡眠薬かどうかくらいわかる」

直江はぎゅっと拳を握ると横を向いて苦しげに声を搾り出す。

「…景虎様が死んでからずっとだ…」

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