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□甘味
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部活が終わってからの事。
真田は着替え終わり柳が着替え終わるのをただじっと待った。
その際真田はそわそわしっぱなしだったが柳は気にも止めずに帰る準備をする。
終わった頃にはもう部室内には真田と柳だけであった。
帰るかと柳が真田を促すとそれを遮る様に柳の腕を掴んで待ってくれと言う。
柳はきょとんとした顔で真田を見つめると真田は顔を真っ赤にして柳にそっと小さな袋を手渡した。
ピンクや赤のデザインの袋に黄色の針金で綺麗に包んであるそれは何とも可愛らしい。
柳は咄嗟にそれはチョコレートだと理解すると同時に嬉しさが込み上げてきた。
「弦一郎…。」
「…き、今日はばれんたいん…だろう?」
真田は恥ずかしさのせいかそっぽを向いてしまった。
その頬はほんのりと赤い。
まるでこの小さな袋の色の様だ。
柳が開けていいかと聞くと小さく頷く真田に微笑しゆっくり袋の口を留めている針金を外して中を見れば丸い美味しそうな一口サイズのチョコが二つ。
昨日己の為に作ってくれたのだと思うと柳はにやけが止まらなかった。
そのままチョコを一つまみすると口に運ぶ。
直ぐに溶けるチョコは生チョコで程よい甘みが瞬時に口内に広がった。
とろける様な甘み、舌触りもよく何とも美味だ。
「…美味いか…?」
真田が恐る恐る柳の顔を窺う。
柳は満面の笑みで頷いた。
それに真田は胸を撫で下ろしてその笑みに釣られる様に笑った。
柳は真田をそっと抱き締めてありがとうと囁く。
真田はくすりと笑い柳の背にゆっくりと腕を回した。
「弦一郎、去年はくれなかったからな。」
「…忘れろ蓮二…。」
からかう柳に真田はむすっとして柳の背を軽く叩いた。
それに柳はクスクス笑うと真田の瞳を熱っぽく見つめる。
この視線はキスの合図。
真田はふっと笑い瞳をゆっくり閉じた。
刹那に唇に感じる柔かな柳の唇は何度もリップ音を立て角度を変えながら真田の唇を啄む。
次第に柳は口付けを深くし舌を真田の口内へと滑り込ませた。
ぬるぬると絡み合う舌と舌が淫らな音を奏でながら貪りあう。
真田の口の端には唾液がつぅと一筋伝った。
それを柳は己の指で丁寧に拭ってやり一度唇を離す。
「…っは…甘い、な…。」
真田はとろんとした瞳で柳を見つめぺろりと唇を一舐めする。
そんな無意識に誘っているかの様な行動をとる真田に柳は欲情しそうになるが寸での所で抑えた。
「…美味しいだろう?」
真田は自分で作ったのだから自画自賛する訳にもいかずにただ曖昧に返事をしただけだった。
「来年も、作ってくれるか?」
「当たり前だ。…蓮二の為にずっと作ってやる。」
「それは楽しみだな…。」
柳はもう一度そっと真田に唇を落とした。
その口付けは甘い甘いチョコレートの味がした。
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