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□聖夜
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今年もやってきたクリスマス。
街は華やかな電飾に彩られ、道行く人はみな幸せに満ちあふれていた。
真田は今柳の家に居た。
というのも毎年クリスマスは柳家で過ごす事が恒例になりつつあるからだ。
何故真田家では駄目なのかというのは言うまでもあるまい。
先程まで二人は寒い中出かけていて帰ってきた時にはもう夕方頃だった。
真田は柳の家に上がると柳に続いてもう見慣れた階段を上っていく。
柳は自室に入り電気を点けて直ぐにリモコンで暖房の電源を入れる。
真田も部屋に入ると部屋のドアを後ろ手に閉めた。
「一年というのはあっという間だな…。」
カーペットの敷かれた床へ腰を下ろして柳は自室のカレンダーを見て言葉を零す。
真田も柳の隣へ腰を下ろしそうだなと同意しながら少し開いたカーテンの向こうを見やった。
窓の外で雪がちらほらと舞っているのを見て真田は思わず身震いをしてしまう。
視覚的な物もあるが何より柳の部屋が寒かったからもある。
柳はそんな真田を見て大丈夫か?と心配そうに真田の顔色を窺った。
「弦一郎、寒いのか…?」
「いや、大丈夫だ。」
しかしその瞬間に言った側から真田はくしゃみをしてしまう。
真田はしまったというような様子で柳を見やれば柳はやっぱりと言って近くにあったティッシュを数枚取って真田に渡した。
「我慢しなくてもいいんだぞ?ただでさえこの部屋は暖房が利きにくいんだからな。」
真田はすまないと恥ずかしげにティッシュを受け取り軽く鼻をかんでゴミ箱へと捨てた。
「で、弦一郎。寒いんだろう?」
「…う、うむ…。」
柳は簡素なテーブルの上に置いてある暖房のリモコンを手にとって温度を確認すれば普通より少し高いくらいだった。
もう少しすれば暖かくなるだろうがかといって真田に風邪をひかせる訳もいかず。
柳は仕方がないと真田の腕を優しく引いた。
目を白黒させている真田は半ば放心状態だったが柳はそれに構わずにそのまま真田を自分の腕の中へと抱き締める。
「…蓮、二…?」
「…少しは暖かくなったか…?」
柳は真田の肩や背中を優しく擦りながら囁きかけると真田は顔を少し赤らめて恥ずかしさからかそのまま柳の胸へと顔を埋めてしまった。
「…う、うむ…。」
「そうか…よかった…。」
柳の視界の端にこの前真田の為に用意したクリスマスプレゼントが目に入ったが柳は渡すのはもう少し待とうと思った。
腕の中で真田の温もりをもう少し感じていたいから。
「蓮二…。」
「ん…?」
「…人肌とは、こんなにも暖かなものなのだな…。」
真田は弱々しく柳の背中に手を回した。
「今更だな、弦一郎…?」
「…五月蝿い…。」
そんな真田の耳は真っ赤に染まっていて柳は思わずにやけてしまう。
少しいじめ過ぎたかなと反省しつつこんなクリスマスもいいかなと柳は思うのだった。
「弦一郎…」
HAPPY MERRY CHRISTMAS...
おずおずと顔を上げた真田にゆっくりとキスを落とせばその口付けはケーキよりも甘かった。
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