素敵なもらい物

□想いそれぞれ
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想いそれぞれ








ぱん!と乾いた音が屋敷の廊下に響いた。赤く腫れてしまった頬を押さえながら目の前の男をぎろりと睨み上げる。


痛みからか、怒鳴られたからか、
じわりと目に水の膜が出来たが滴がこぼれないように男から背を向けた。


一言、「私は悪くない」と言い捨てて。





男…ジョットはユナの背が離れていくのを見てはっとした。
自分は、なんてことを。ついカッとなって、なんて許されることではない。愛しい人に手を上げてしまうなど。




そもそも、どうしてこうなった?




ああ、そうだ。
人手が足りないときに抗争があって、どうしたものかと頭を悩ましているときに、ユナが俺に何も言わず一人で戦場に赴いたのだ。それで俺の頭に血が昇った。

ユナは無茶をして傷をたくさん作って帰ってくる。毎度、毎度。そして今回も。心配を通り越してしまった俺は怒鳴ってしまった。


人を叩くとこんなに手が痛いんだな、心も…。冒頭の前の会話が自然と浮かんできた。





「何故いつも勝手に行くんだ!」




「!?言ったらジョット反対するじゃない!」




「当たり前だろう、いつも傷を作ってきて…一度死にかけたことだってあった!忘れたのか!」



「人が足りないって困ってたのは貴方なんだよ!?助けになって何が悪いの…そんなに私は使えない奴じゃない!!」





感情にまかせて振ってしまった手は、止まることを知らない。


「っ心配しているのがわからないのか!?」



「…っ、」




目に涙を溜めて、走り去っていくユナの背が見られなかった。
どうしてこうなってしまったんだ、ただ、心配をしていただけなのに。愛して、いるというのに。




「なにやってんだよお前等」




「…G…」




振り替えれば呆れ顔を浮かべている幼なじみ。何故ここにいると問えば、あんなに怒鳴り合っていれば誰でもわかる、そう言われた。確かに。




「冷静になれよ。心配だっていうお前の気持ちはわかるが手をあげたら終わりだろ」



「……返す言葉もないよ」



「ったく、世話の焼ける奴らだな…心配ならそう言え。あいつにはちゃんと言わないと伝わらねえだろ」



「ああ、そうだな」



「それにお前等が早く元通りにならないと屋敷中パニックなんだからな」



ひらひらと手を振り、「さっさと行け」と物語っている背中に礼をいいユナのもとへと歩き出した。


そうだ、ユナとつき合うときだって回りくどいことをして失敗して、直球で伝えねば彼女の心に届かないこと、俺が一番よく知っていた筈なのに。


謝らなければ、叩いてしまったこと。





****




「…超直感って本当最悪だよね、」




中庭の茂みの陰に、彼女はいた。先程、睨んできた目は赤く腫れてしまって、そして俺が叩いてしまった頬も痛々しく腫れてしまっている。ずきりと何かに刺されたような感覚を味わう。



「、ユナ」



「聞きたくないよ。あっち行って」




ぐっと近くに寄るが下を向いて手で抵抗し
てくるユナ。その手をやんわりと拘束して、口を開いた。




「なら、独り言だと思ってくれて構わない。ユナ、叩いてしまってすまない…本当に…。でも、君が心配だったんだ、ユナが戦場に行ってしまったと聞いて心臓が押しつぶされそうだった…。


ユナには、戦わないで…ただ、俺の隣で笑って居て欲しいんだ。…わかってくれ、ユナ」




勝手な願いだと思うが、愛しい人が怪我を
して平気な奴など居るわけがない。感極まって抱きしめてしまう。
また抵抗されるのを覚悟したが、ユナは静かに俺にもたれ掛かった。彼女の肩の力が抜けたような気がした。そうして、ぽつりと話してくれた。



「…初めて、戦いに参加して…勝って帰ってきたときジョット私のこと褒めてくれたよね…」


「あぁ…」


「…今まで何も…役に立たなかったから、すごい嬉しかった。だから、ジョットの為に…私に出来るのはこれしかないって…」


…彼女に無茶をさせていたのは、他でもない俺だったのか。思わず、腕に力がこもった。




「だから…」




「もう、いい。俺が君を追い込んでいたんだな…本当にすまない…」




それでも手放せなくて、そんなつもりはなくて。顎をくっと上げて涙を唇で掬う。びくりと肩を揺らしたが気にして上げられない。



「二度と戦場には出ないでくれ」





「…でも、」




「ユナが傍に居てくれるだけで、それだけでいいんだ」



「何か手伝えることはしたい」




そこは願として譲らないらしいユナに、ふっと笑みがこぼれてしまう。彼女は俺よりも不器用だったみたいだ。




「ぶったんだから、一個貸しだよ」



「参ったな…」




ふふっと楽しそうな彼女の頬に唇を寄せた。すぐにあがる体温に嬉しくなったのは秘密だ。恥ずかしくなったのか、ユナは俺の胸に額をぐりぐりと押しつけている。可愛い。嬉しい、が…。




「顔が見たいんだが…」



「やだ」




即答されたことに若干がっかりしたが、無防備な耳にそっと息をかけた。


すぐに顔を上げないと、深いのをするぞ…?


半分冗談で言ったそれに、ユナがばっと顔を上げた。少し残念だと思ったのは流れる風だけが知っていればいい。








想いそれぞれ
(結局は、お互いの為に)








(…っ直ぐ顔あげたじゃん!)
(してほしそうな顔をしていたから)
(!そ、そんな顔してない!!)












▼あとがき▼

琉亜さまへ!ジョットで切甘ということでリクエストいただきました(^^)
如何でしたか?
なんだかずっとシリアス走ってた気が…汗

気に入っていただけたら嬉しいです!







=======



はい!すごく気に入っております^^


本当にありがとうございました!

これからも応援しています!


琉亜






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