ツンデレ
□ツンデレ 2
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僕の名前は、五寸釘光━━━━
クラスの中じゃあんまり目立つタイプじゃない。
よく"影が薄い"と言われるけど、あの忌々しい早乙女乱馬と同じクラスになれば、誰だって影が薄くなるに決まってる。
その、早乙女乱馬は未だに同じクラスの僕に、いつも"あれっ?誰だっけ?"と言われるんだ。
くぅぅっっ!!!!!
アイツの頭はどれだけ単細胞なんだっ!!!
でも、僕が一番腹が立つのは、そんなことじゃない。
僕の憧れの女性。天道あかねさん。
何故、あんな男と闘うんだ。
それにアイツはプールで溺れた君を馴れ馴れしく彼氏顔して、お、お姫様抱っこしたんだぞっ!!!
それからというもの、早乙女乱馬と君を疑うヤツまで現れたというのに……。
ゆ、ゆ、許せない。
許せないんだぁぁぁーーーっ!!!!
って、あれは既に帰ったハズのあかねさんではないですかっ!!
すごい剣幕で、それも叫びながら教室の扉を開けたけたのに、なかなか中に入ろうとしない。
僕は気になり、コッソリと窓から中を覗いた。
さ、早乙女乱馬じゃないか!!!
それも一人で??
まさか、あかねさんと早乙女乱馬は恋仲なのかもしれない。
いや、そんなわけがあるもんかっ!!!
そんなことは許されないぞっ!!!
僕は拳を握りしめて窓越しから早乙女を睨んでいると、あかねさんが中へと入っていった。
彼女が危険な目に遭うかもしれない。
そう思うと扉へとほふく前進で近付き、中の会話に耳を澄ましていた。
おっと、誤解されては困るよ。
これは、決して盗み聞きではないっ!!!!
あかねさんを護るためだなんだっ!!!
『どうして早乙女乱馬がここに居るのよ』
『さ、さっきの授業を邪魔したって、怒られてたんだよ。お前だって、なんで戻って来てんだ?』
『わ、忘れ物よっ!!』
『へぇ、あかねもそんな抜けたとこがあるんだな』
『悪かったわね。授業中に叫ぶような人には言われたくないわ。大体、なんなの?事故だっ!!て?』
『な、な、なんだっていいだろっ!!!』
『いいわよ。別に。アタシには関係ないんだから』
『……そうだよな』
『それと、前から言いたかったんだけど、馴れ馴れしく名前で呼ぶの止めてくれない?』
『はぁ?なんで?それより、お前のフルネームで呼ぶほうが可笑しいだろ?』
『何故?アタシとアンタはライバルでしょ?だからフルネームなのよ。可笑しい?』
『可笑しいだろ。あかねとはライバルでもねぇし』
『アタシにはライバルなの!!だから、そのあかねっていうのは止めてってばっ!!』
『……今更天道なんて言えねぇよ』
ほら見たことか、早乙女乱馬っ!!
あかねさんは早乙女乱馬が嫌いなんだ。
それなのに、しつこいヤツめっ!!!なんとか懲らしめてやるんだ。
『これ以上ヘンにウワサされたくないの。今日だって質問攻めされてたでしょ?』
『……なあ、あかね。そのことなんだけどこないだの保健室』
『………。』
『あれから、なんちゅうか……前以上に機嫌悪ぃだろ?』
『何が言いたいの?』
『言いてぇっていうか、あかねってオレにケンカばっか申し込んでくっから』
『ケンカじゃないわっ!!決闘よっ!!』
『わぁったから。そこじゃねぇんだよ。言いてぇのはっ!!!』
『……。』
『いっつも、考えなくケンカにつきあってたけど、オレやっぱりあかねと闘うなんてしたくねぇって思ったんだ。今にも折れちまいそうな細ぇ身体に蹴りなんか出来ねぇや』
『そんなの困るわっ!!!まだアンタに一度も勝利どころか、一発も拳を沈めたこともないのっ!!それじゃ納得出来ないに決まってるでしょっ!!』
『あのなぁ………こないだの保健室だって、キスした後にオレをボコボコにしのは誰だっけ?』
『あ、あ、あああれは!!!』
キ、キキキキキキキキスっ?????
あかねさんと早乙女乱馬がキス????
う、嘘だっ!!!信じないぞ。
僕は信じないんだからなぁぁぁぁっっ!!!!!
『それで十分だろ!!確かにそれまで抱きつかれたり色々あったけど結果的にオレは殴られた』
『っっ!!!!!!』
『まあ、いいパンチだったぜ。このオレが暫く……うげぇ』
『アンタって最低っ!!!』
ざまぁみろ!!早乙女乱馬!!!あかねさんにもっと殴られればいいんだ!!!
そして、安心してください。あかねさん。
あかねさんは僕が護るよっ!!!
「あっ!!」
こっちに向かってくるあかねさんを慰めようと、僕は拳を握ったまま立ち上がった。
「あかねさーんっ!!!!!僕はっっ!!!!」
「きゃぁぁぁぁぁっっ!!!!!」
「っ!!!あ、あかねっ!!!」
「ぐぇ………。」
早乙女乱馬がスローモーションで目の前に現れたと思った瞬間、僕は意識を失った………。
「大丈夫かっ!!!あかねっ!!」
「………んんっぁ!!」
何が起きたのかわかんなくて、ゆっくりと目を開けると、自分が早乙女乱馬の胸にうずくまって、アタシを護るように抱きしめられているのがわかった。
「ったく、コイツ誰だよ……て、誰だっけ。見覚えあるんだけどな……ん?」
「んっ!!!」
「わわわっ!!!わざとじゃないぜっ!!ぜってぇにっ!!!」
慌てて離れた早乙女乱馬から、逃げるようにアタシはその場を去った。
初めて男の人に助けられたかもしれない。
情けない。他の事に気を取られていた証拠よ。あかね。
倒したい相手に助けられちゃうなんて。
本当に、今日はツイてない一日だ。