☆中編
□PLAY BALL
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中国呪泉郷での死闘から戻って来て、アタシ達は17才になった。
相変わらず、シャンプーや右京、小太刀が乱馬を追い回すことがなくなるわけもなく、むしろ増えたような気もする。
ホントにはっきりしないんだから。乱馬のバカ!!
それでも変わった事だってある。
それは乱馬の態度だ。たまに見せる乱馬の仕草というか…。
まあ、それ以外は何も変わってなんかいない。
"キーンコーンカーンコーン"
「おーいあかね。帰るぞー」
乱馬にとって長かった授業もやっと終わり、早くもカバンを背負っていた。
「待ってよ。直ぐ行くから」
アタシは教科書をカバンに押し込み、足早に乱馬の隣に駆け寄った。
「絶対今日は稽古に付き合ってもらうからね!約束したでしょ!」
「あ、ああ」
渋い顔しながら乱馬が頷く。
昨日、アタシが買っていたプリンを勝手に食べてしまった代わりに稽古に付き合う約束を取り付けた。
どうせお小遣いもほとんど持ってないみたいだから、この約束でチャラにしてあげたのだ。
あんまり稽古に付き合えってもらえないワタシにとって、実はプリンよりも楽しみにしてるんだけど乱馬は浮かない感じでいる。
「もぉ。早くー」
アタシは乱馬を急かしながらいつもの帰宅地を2人で歩いていると、聞き慣れた声が遠くから近づき、嫌な予感がした。
「アイヤー乱馬!これは運命ね!デートするよろし。」
「乱馬さま!見つけましたわよ」
「らーんちゃん、うちのお好み焼き食べに来ぃひんか?」
シャンプーは出前の帰りか、愛車の自転車にまたがって、突っ込んでくると同時に小太刀がバラをばらまき、下校のタイミングがぶつかった右京が背負った大きなヘラを両手で持ったまま、仲良くいつものように現れた。
まあ、慣れてるんですけどね。このパターン。なんでいっつも同時にあらわれるのよ??
アタシは乱馬をちらっと横目で見る。
「あ、わりい。今日はちょっと、よ、よ、用事が…あ…る?」
なんなの!そのはっきりしない態度わ!
「用事は、ワタシとデートすることね」
「何をおっしゃいます。乱馬さまはわたくしとっ!!!」
「はー?うちかてらんちゃんに用事があんねん!!!」
もー!!なんでいつもいつもこーなるの!
そして、アタシは蚊帳の外。腹立つったらないわ。隣であわあわしている乱馬に、アタシはため息を一つついてボディーブローを決めた。
「うぅっ…。いってーな、このキョーボー女」
「なんですって!そもそもあんたがはっきりしないからでしょーが」
「オレは関係ねぇっ!」
えらそーに乱馬はアタシた胸はって言い返してきた。
「あかねは、関係ないね。乱馬早く誰との用事を選ぶか決めるよろしね。」
「せや、らんちゃんが決めーや。」
「もちろんわたくしですよね。乱馬さま。」
ワタシ達のやり取りを無視する三人娘はじわじわと近寄り始める。
あっ、そろそろ攻撃される!乱馬が、だけどね。
「「「くらえー!愛のムチ!」」」」
シャンプー達が同時に向かってくる瞬間に思わず右腕で顔を隠し、目を強く瞑った。
その瞬間、体かフワッと浮いた感覚がした。
"ん?"
今までない感じ。いつもだと目を開けるとすでに乱馬が追いかけられているのを、遠くから見届けて終わるはずなんだけど・・・
うっすら目を開けるとアタシは中に浮いていた。
「このまま、家まで逃げ切るぞ。落ちねぇよーにしっかりつかまってろよ。少し遠回りするからな!」
同時に耳元で乱馬が呟いた。
「う、うん」
あれ?いつもと違う。あれ、こないだもこんなことがあったよーな。
自分が思っている展開と違う事に、頭がパニックになる。
あれ?あれ?って。
家の屋根までついて乱馬がアタシをストンと降ろし、キョロキョロしながら、シャンプー達が追ってきてないか確認する。やっぱり、息一つ乱れていない。スゴいって素直に思う。
彼の横顔を、思わず見いっていたら目が合う。思わず、下を向いてしまった。
「大丈夫みたいだせ。ん?どーしたあかね?」
どーもしないんだけど、なんとなく顔が上げれずにいると乱馬がアタシを自分に引き寄せ、顔を覗きこんできた。
「おい、あかね?大丈夫か?稽古どーすんだ?」
わわわっ、なんでこんなに近いの?ドキドキしてしまう。アタシだけ動揺してる。でもそんな気持ちバレたくないよっ。
「なっ。す、するわよ、稽古。き、着替えてくるから、は、離してよ!」
顔が見えないようにくるっと体の向きを変え、するっと乱馬の懐から抜け出た。
どうしてこんなに可愛くないんだろう。アタシ。有り難うがどうしても出てこない。
ちらっと乱馬を見ると、やっぱりムッとしてる。
「ったく、可愛くねーな。まっとっととやろーぜ。道場で待ってるぜ。」
ふて腐れながらも、約束している道場に向かう乱馬を眺めた。
やっぱりアタシだけドキドキしてる。
何なの?この違和感。
気にしすぎなのかしから…。