☆長編
□龍王
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後少しで夕御飯の時間
いつの間にか昼寝してたらこんな時間になっていた。
居間に降りるとあかねが風呂から出てきてバ
タバタしている。
ん?何処か行くのか?
「じゃあ行ってくるね、かすみおねーちゃん、御飯要らないから」
あかねは、買ったばかりのワンピースにベストを羽織り、お気に入りのハイヒールを履き忙しくでかけていった。おい、そんなお洒落して何処に出掛けるんだ?
「気をつけてね」
笑顔で見送るかすみさんに訪ねた。
「中学校の時のお友達と会うみたいよ。プチ同窓会って言ってたかしら」
「プチ?」
なんだそれっ、て顔してたら
「仲の良かった何人かと会うみたいよ」
かすみさんは晩御飯の準備で台所へ向かった。
"そんなの聞いてねーぞ"
なんでぃ、あかねのヤツ。別に遊びに行くのはなんとも思わないが、そんなに楽しみにしていたんだったら話してくれればいいじゃねーか。
なんて口が裂けてもいえねーんだけど。
オレは道場で一汗流すことにした。
「てやーっ!はーっ!」
稽古は自分を裏切らねぇ。影の敵との打ち合い。ただ今日は身に入らない。
「やーめた!」
風呂に入って晩御飯に備えよう。
何やっても集中でず、その事にイライラしてしまう。
アイツの中学校、共学だよな。
「きゃー久しぶり!」
「元気にしてた?」
「お前かわんねーな」
「あかねーここだよ」
10人程度の集まりにあかねは手招きで呼ばれた。
「ごめーん遅れちゃった」
ぺろっと舌を出してみんなに謝り、席についた。
「あかね久しぶり、髪切ったんだ。似合ってるよ」
「そう?」
「みんな元気そうだね」
「あかねの事待ってたのよ、よっ!アイドル!」
「そうだね、強いけど可愛いって他の学年でも有名だったもんね」
「そうだっけ?」
「そうよ」
その手の話は苦手なあかねはメニュー表を見ながら知らないフリをしていた。
「おい、天道。久しぶりだな」
「わぁ!真くん!」
他の席に座っていた彼はあかねに微笑んで隣に座った。
「相変わらず稽古してんのか?」
「最近は怠けてるかも」
へへ、と笑いながら答えた。
「そっちは?」
「俺は頑張ってるぜ。稽古は自分を裏切らないからな。」
「へー今度手合わせしたいな」
強い、と聞くと興味が沸いてしまう
「無理。あの時は天道に負けてたけど今は俺の方が強いぜ」
即答され、
「やってみなきゃわからないわよ?」
少しムッとした声で答えた。
「あかね止めときなよ、真は少林寺で全国大会覇者よ」
「まあね。」
「そうなんだ」
それでも同級生の活躍に嬉しくなる。
「でさ、今じゃこの甘いマスクでトーンの低い声。モテまくりなんだぜ」
同級生の冷やかした。
「そんなことねーよ、興味ねーし」
中学の頃、あかねが昔よく手合わせをしていた真が、雰囲気も大人になり懐かしさより驚きの方が勝っていた。
「それにしても、懐かしいわね」
あかねは、真ににこりと笑った。
「天道、髪切ったんだな。俺そっちの方が可愛いと思うよ」
「え?」
不覚にもどきっとした。
"乱馬に言われたっけ"
こんな時でも、乱馬を思い出してしまう自分に照れた。
"そう言えば今日の事、言わずに来たんだ"
"遅い。遅すぎる。何時まで遊ぶつもりだ、あかねのヤツ"
何度も時計を見てしまう。さっきから5分しかたってねーし。ひょっとしてどこかで倒れてるかもしれねぇ。そんなことはねーよな。
「たく、迎えに行ってやるよ」
オレは家を飛び出した。早くあかねに会いたかった。
探していたあかねを見つけるのに時間はかからなかった。ただあかねはオレの知らねぇ男と歩いていた。
"誰だ"
姑息かもしれないが、オレは二人の後をつけた。
「別に送ってくれなくてもいいのに」
「一応な。たとえ強くても女性を一人で夜道は危険だろ」
「大丈夫よ」
「相変わらず血の気があるよな、天道は」
な、なんだアイツ。
「なあ、天道。なんで髪きったんだ?」
あかねは、困った顔をしている。
「色々あって、でもかなり気に入ってるのよ」
と、髪を耳にかけた。
「お前さあ、好きな人の為に伸ばしてたんだろ?」
おい、なんでアイツが知ってるんだ。
「え?」
「俺、気づいてたんだわ。まあ、お前の事結構見てたんだけど、知らねーよな天道は」
「真くん?」
シン?
「その恋は終わったってことかな?」
「そうだけど」
「・・・天道」
ソイツはあかねの腕を掴んで引き寄せかけた。
「おい、何やってんだ。あかね」
「乱馬」
「乱馬?」
オレを見てもびくともしねえ。それどころか自信に満ちている?
へえ、オレの気を怖がらねーのか。いい度胸してやがる。
「迎えに来てくれたの?」
あかねはオレの方に歩いて行こうとしたのに、アイツが腕を引いた
「天道誰だ?アイツ?」
自分でも押さえられない位の黒い感情が支配し始めた。
「テメーには関係ねーだろ」
二人に近づき、強引にあかねの肩を抱き抱きしめた。
「ちょっと。乱馬」
嫌がるあかねが離れようとするが、離すつもりはねえ。
「おい、天道が困ってるじゃねーの」
ヤツが、睨んできた。
「関係ねえんだよ」
オレも睨み返す。
「わかった、天道。また連絡するわ。ちゃんと話がしたかったのにコイツがいると話になんねーし。じゃあな、天道も大変たな」
「え、え?」
そう言うとアイツは帰っていった。
「なんだろ?話って?」
コイツは本当にニブイ。
こんなお洒落して、アイツと会ってたのか?あかね。オレ以外の男と・・
「いくぞ、あかね。少しじっとしとけよ。」
「きゃっ」
オレは強引にあかねを抱えて家に戻り、あかねの部屋に入った。
「あの、遅くなってごめんなさい」
「ああ」
「えっと、さっきの彼は中学校の同級生なんだ」
「ああ」
「なんか、誤解してない?只送ってくれてただけよ」
「・・・」
「乱馬?」
「・・わかってないな、お前」
オレはあかねをベッドに押し倒した。