☆長編
□ダメなんだから!! 1
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「あかね早く!」
「またぁ?もう、いいわよ」
「なんで?付き合ってよぉ。見たいのっ早く!」
「ホント好きね」
「いいじゃん、早く早く」
ゆかはアタシの腕をぐいっと掴んで、引っ張りながら駆け足で学校の体育館に連れていこうと必死だ。
アタシ、天道あかね 17才。高校2年生
ゆかとは一年生の時から同じクラスで
一番仲のいい、いわゆる親友。
こないだなんか、放課後にカフェでたわいのない話で盛り上がっちゃって、気付いたら2時間も経ってた。
ホント気が合うんだけど、唯一違うのは・・
「キャー!!見てっ!やっぱりカッコィィ!」
アタシと違ってすっごくミーハーな所。
「ほら、あかね見てる?」
「そうね」
ゆかに引っ張られて連れてこられた体育館は、他校とバスケの練習試合中だった。
アタシはまったく興味がもてない。そもそも男の子にもバスケにも興味がない。自宅に道場があるせいか、格闘のほうが見ていて興奮しちゃうんだよな。
「あかね。あの人かっこよくない?」
「え?」
興味なくそっぽを向いていたアタシを叩いてゆかが指したその人は、長い髪をおさげに結っていて赤いユニホームがよく似合う。確かに目立つわ。
みんな既にバテ初めてるのに、余裕で
走り回り、ボールを奪ってシュートを決めてる。
他の人とは明らかに違う。
「確かにスゴいかも」
「なにいってんのよ?カッコいいかって聞いてるのに」
筋肉質なのに身体が浮いてるみたいにぴょんぴょん跳ねてる。
スゴイ・・・
『ピーッ!』
「・・・」
「・・かね、あかねってば」
「あっごめん、ちょっとぼーとしてたわ」
ゆかの声で、アタシははっとした。
「大丈夫?ねえねえ、折角だから話し掛けにいかない?」
「もう、いいわよ」
ゆかは、アタシの腕を左右に揺らて行こうと引っ張るけど、そういうのアタシは苦手。だって何を話せばいいのかわからないんだもん。趣味は?とか、血液型は?とか?第一話したいなんて思わない。
「ほら、みんな行ってるじゃない。行こうよ」
確かにさっきまで試合を見ていた他の子達がキャーキャーいってる。
あの、おさげの彼の回りにもスゴイ人が集まってて何かおねだりされているみたい。
"人気あるんだ"
「もう帰ろうよ、ゆか。もう試合も終わったしね」
「ええ〜!」
渋るゆかをアタシが逆に引っ張って体育館から出ていくと、赤いユニホームを着たおさげの彼とは別の男子が話し掛けてきた。
「天道さん、ちょっといいかな?」
「何かしら?」
「前にも練習試合に来たことがあるんだけど、その時からずっと天道さんの事が好きで。良かったら付き合ってまらえませんか?」
まただ・・・
「あかね、また告白されちゃって」
隣のゆかがアタシに小声で耳打ちしてきた。
"もう、ゆかってば"
告白ってホント苦手。だって、断った後の気まずさといったら、なんとも言えないんだもん。
だから、恋愛は苦手分野。
なんでみんな、そんなに簡単に好きになれるの?
「ごめんなさい、アタシ今そういうの考えられないの」
「そっか。わかった」
彼は少し苦笑いをして、体育館から覗いていた同じ赤いユニホームの仲間達に頭をくしゃくしゃされながら輪の中に戻っていた。
その輪の中に、おさげの彼がいた。
「ただいま!」
「お帰りなさい、あかねちゃん」
台所で夕御飯の準備をしていた、かすみお姉ちゃんはいつも玄関まで迎えに来てくれる。
家はお母さんが亡くなってからずっと、長女のかすみお姉ちゃんが全て切り盛りしてくれてる。あと、次女のなびきお姉ちゃんもちょっと性格がキツいけど、近所じゃ美人姉妹って呼ばれてて、その中にアタシは・・入っていない。だって、あの二人より子供だもん。
中学生に間違えられることがあるなんて、恥ずかしくて言えないわ。
「帰ってきていきなりなんだけど、商店街にコロッケ買ってきてくれないかしら?注文してるから」
「わかったわ!アタシ行ってくる」
「ありがとう、あかねちゃん」
アタシはかすみお姉ちゃんからお財布を預ってそのまま直ぐに玄関をでていった。
「いらっしゃい!おっ今日はあかねちゃんがお手伝いしてるのかい?」
「そうなの」
家はここのお肉屋さんのコロッケが家族みんな大好きで、常連。しかも、ここの店主はかすみお姉ちゃんのファンで、ちょっとした無理でも聞いてくれる。
今日はアタシが来たからちょっと残念そう。
「はい、これ注文もらった分だよ」
「ありがとう」
「毎度あり」
店主に会釈し、アタシはかすみお姉ちゃんに頼まれたコロッケを手にして今来た道を戻ろうと、お店からでるといきなり誰かと肩がぶつかった。
「きゃっ、すすいません。前見てませんでしたっ!」
アタシは相手も見ず、ぺこりっと謝った。
「大丈夫だよ、そっちは?」
ぶつかった相手の男性で、アタシを逆に心配した様子で謝ってくれた。
「大丈夫です。ホントすいませんでした」
よかった。優しそうな人で。アタシはほっと胸を撫で下ろした。
「そんなに気にしないで大丈夫だよ。キミみたいなカワイイ子だったら、ラッキーだし」
「そんなこと・・」
なんでそんなこと言うんだろ、男の人って・・
「ホント!だからさ、よかったらこの後どこかいかない?」
「へっ?」
あれ?アタシさっきまで大丈夫って言われた人にナンパされてるの?"だから"ってなに?
「ねっ?」
「いやぁ・・・はぁ」
ぶつかったのはアタシだけに、すごく断りずらい。どどどっどうしよう。それも結構な強引っぷり。
「どこいく?」
「あのぉちょっと」
「おいっ、何やってんだ?早くいくぞ」
"えっ!!"
「はっ?キミ誰?」
「ワリイ。コイツどんくさくって」
「ちっ、気を付けろよ」
・・・なんで?
なんで、あの体育館にいたおさげの彼がここにいるの?
「いくぞ」
アタシの頭は????って感じで、彼に連れてかれるまま、その場を後にした。
「あの、、ありが…」
「お前隙だらけだな」
商店街から少し離れたと所で掴まれていた腕を離した彼は、いきなりアタシに対してニヤリと笑って、アタシのお礼の言葉を遮った。
なっ!!
初めての言葉がアタシをバカにした発言て、なんてヤツなの!
「た、たまたまです」
「それにしても、よくおモテになることですね」
なんなのよ?このイヤミな言い方は!
さっき助けてくれた時は、ちょっといい人かもって思っけど、撤回よ!
「関係ないじゃないですか!」
「・・そりゃそうだ」
「ともかく、ありがとうごさいました。じゃあさようなら」
助けて貰ったのは事実だし、アタシお礼だけは伝えて彼に背を向けた。
「待てよ、天道あかね」
"えっ?"
名前呼ばれたんですが・・・。
「アタシの名前、知ってるの?」
「お前、あそこの道場の娘だろ?オレも一応格闘やってるしな」
"そ、そっか"
アタシの家の道場は近所でも大きくて一応有名だし、格闘やってたら知っててもおかしくない。
「そうなんだ」
だからあんなに筋肉質なんだ、
「オレ早乙女、、早乙女乱馬だ」
「早乙女くん?」
「早乙女くんか・・・乱馬でいいぜ」
「じゃあ乱馬・・くん」
今日初めて喋る異性に対していきなり呼び捨てなんでアタシには無理だ。
「・・で、助けたのにそれじゃあ帰せねぇなぁ」
「冗談止めてよ」
ホントなんてヤツなの!
アタシは立ち止まって彼をキッと睨んだ。
「オレは至って本気だぜ」
呆れるぐらい平気な顔してる。こんなサイテーなヤツにお礼なんかしなきゃよかったわ。
「何が目的?」
「目的・・・そうだな。お前、男に興味ねぇの?」
ちょっと意外な質問。
「な、ないわよ。それが何か?」
「オレさ、こう見てもモテんの」
なに?今度は自慢?
「だから?」
「でもさ、実はオレもあんまり女の子に興味がねぇんだよ」
「何が言いたいの?」
「だから・・・」
アタシの目の前に腕か伸びたと思ったらいつの間にか川沿いのフェンスと彼の腕に囲まれていた。
"・・ドクン"
「オレと付き合えよ」
"・・・・ドクンッ"
「え?」
「だから、オレと付き合うんだ」
"えええええええっっっっ!!!"
ななななっなんでぇぇぇ??
「そんなに驚かなくていいんじゃねぇか?」
相当驚いた顔をしていたんだと思う。でも驚くでしょっ!フツー!
「お前にとってもオレにとっても都合のいい話だぜ。だってコクられても彼氏いますって言えばいいんだし、広まればコクられることも無くなるだろうし」
「いいいっ嫌よ!、アタシは!」
なんてバカらしいの?そんな仮面夫婦ならぬ仮面カップルなんてっ!まだ、アタシ誰とも付き合ったことないのに!
いつか、好きな人とって憧れてるアタシの気持ちはどーなるのよ!
「めんどくせぇだろ、告白されんの」
「サイテーね!そんな嘘のカップルなんてすぐバレるに決まってるじゃない!」
「・・なるほど」
「そうよ!だいたい、好きじゃない人と付き合えるわけないでしょ」
「じゃあ、オレの事好きになれば?」
"!!"
彼はアタシの顔に近付いてニヤっと笑った。
近い!近いってば!!
「ばばばばっかじゃない?あなただってアタシの事好きじゃな・・・」
"んっ"
その時アタシの唇は・・彼に奪われてた。
「じゃあ、別の理由ならいいんだろ?」
「・・・・」
「・・・お前の唇を奪った責任をってやるよ」
そしてまた唇を・・・奪われた。