キリリク
□ジーン 2
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「姫さま抱っこしてベッドまで連れてってやろうか?」
「もうっ、いいわよ!!」
目を合わせたままのあかねを茶化すように意地悪く言うと、気恥ずかしそうに視線を逸らして赤いほっぺたを膨らませ、オレの期待感と心をくすぐる。
「じゃあ早く部屋に行こうぜ」
抑えきれねぇ気持ちがあかねを急かし、腕を掴んで風呂場を後にしようとした。
「ま、待って!!シャワーは浴びたいの」
「いいよ、別に」
「アタシが嫌なの!!」
「ったく。部屋で待ってから」
「………うん」
膨らませたままのほっぺたで、らしいっちゃらしい発言に、可愛らしく焦らされるのも悪くねぇと頭をポリポリ掻きながら1人先に風呂場を後にする。
"おっと、こっちも準備がいるんだったぜ"
夢中になり過ぎて忘れかけていた立場を冷静に思い出した。
ふぅと一息付き、タオルで髪を拭きながらトランクスだけ履いて、あかねの部屋にある音楽プレイヤーの電源を押し、ボリュームを即座に上げ、つけっぱなしの部屋の電気を消した。
"さてと"
薄暗い部屋に目が慣れ始める前に、以前から位置を確認している盗聴器に手を伸ばし、それをスピーカーの前へ静かに置いて自分の部屋に入った。
少しぐらいの音だったら、ある程度騙す事が出来る、ちょっとしたワザだ。
あかねが最近、好んで聴いてるこの曲。
オレにとっては音が鳴れば何でもいい。
誰が歌ってるのか知らねぇし、悲しい曲なのか楽しい曲なのかもわからねぇけど、今は心地いい曲に聴こえて、暫く耳を傾けていた。
「……はぁ」
どうしよう。アタシ、頷いちゃった。
ひょっとすると凄い決断をあっさりしてしまったんじゃないの?と、軽率に思い初めてしまい、言いようのない不安が急激に襲ってシャワーのハンドルに手がなかなか伸びない。
それでも、乱馬の腕に抱きしめられた時のドキドキと、身体の異変に嘘はなくて、それがこのお風呂から出た先に待っているのは間違いないと、未知の期待しているのも確かな事。
「……ふぅ」
やっと決心してシャワーのお湯を止めた。
長く浴びたせいで、のぼせてしまいそう。
のろのろと全身をタオルで拭いて、下着を履き、上着のボタンを掛けた。
「おせぇよ。中で倒れてるかと思ったぞ」
「ご、ごめん。今出たの。着替えてる最中よ」
少し怒った声で脱衣場に入ってきた乱馬に心配させるほど時間が経ってたんだと、慌ててパジャマのズボンを手に取った。
「どうせ脱ぐからいいだろ?」
「なっ!!!」
戸惑うアタシに意地悪く笑って抱きしめ耳元に唇を寄せた。
「乱馬?」
「躊躇ってたんだろ?」
「………。」
躊躇っていたのは確かだけど、それは乱馬が思っている躊躇とはきっと違う。
「どうしたい?」
「………。」
どうしたい?なんて言える訳ないわ。
「まぁ、十分焦らされてっから逃がさねぇ為に来たんだけどな」
「………もうっバカァ」
まるで気持ちを読まれたみたいで、恥ずかしさを誤魔化すように思いっきり乱馬に抱きついた。それが、唯一出来るアタシなりの返答だった。
「よーし。いいか。隣にバレるからあんまり喋るんじゃねーぞ」
トーンを抑えた声で囁き、それに頷くと乱馬はアタシをお姫様抱っこで軽がると抱きかかえられた。
「きゃっ!!!やだっ!!!重いから降ろしてよっ!!!」
「だから静かにしろって、おてんばな姫さまだな」
小さく抵抗しても、聞く耳を持つことなく、そのまま乱馬の部屋まで運ばれベッドにゆっくり降ろされる。
「……。」
暗さに目が慣れてなくて、乱馬を見上げてみても表情が全くわからない。
その暗闇の中で、温かい掌がアタシの頬を包つみ、確かめるように親指で唇をなぞる。その手を掴んで頬に擦り寄せると、もう一つの掌がアタシの髪の毛を優しく撫でた。
それだけで不安が徐々に和らぎ、近寄って来る影に自然と瞳を閉じると、知っている感触が唇に触れていた。
閉じていた唇が緩み、誘われるように舌を押し込んであかねの舌を味わう。
そのまま風呂上がりの香り漂う首筋に移動させると、あかねは小さく悲鳴を上げて首をすぼめた。
早速あかねの弱点を見つけたと、力を入れてしつこくそこを舐める。
「ひゃぁぁ……んっ!!!」
声を殺しながらも小さく唸る口に指を押し込むと、あかねは縋るように吸い付いた。
さらに、胸を支える下着を纏わぬ服の上から尖った先端を触ると、切ないほどに固くなっていた。
急激な刺激はダメだとわかってんのに、気持ちとは裏腹に、その尖った先端を服越しに口で摘んだ。
「んっっっ!!!」
びくんっ!!と身体を反らして刺激に耐えるあかに、服を捲りあげて胸を揉んた。
柔らけぇ……。
自分が女になった時の胸とは明らかに違う感触。
なんでこんなに気持ちいいのかわかんねぇ、手に収まる弾力の良い胸を食べてぇって思うのは当り前の性だ、と言い訳しながら舌で味わった。
「はぅんっ!!」
乱れる息遣いが聴覚を刺激し、スラリと伸びたあかねの太ももを掌で撫でながら、上へと這う指は下着の手前を捉えて往復させる。
「あ、あかね……。」
耐え切れずあかねの名前を呼び、咥えさせていた指を抜いて唇で塞ぎ、その指で下着をずらして秘部を触った。
「ふぅっん!!」
「……!!!」
生ぬるい液が手に絡みつくそこは、オレが思っていた以上に湿り気に帯びていて、一気に心が舞い上がった。
"スゲェ……。"
無垢で世間知らずのあかねを自分がここまで感じさせていて、自らオレに舌を絡ませて来るという支配感が満たされ、感動さえ覚える。
ゆっくり擦り始めると、身体をよがらせながら悶えるあかねが唇を離した。
「乱馬ぁ」
カーテンから薄っすらと月明かりが差し込み、あかねの顔を微かに照らす。
「……あかね…。」
眉は下り、困った様な表情に、胸が締め付けられるぐれぇの愛しさが込み上げて、オレの下半身を激しく疼かせた。
「身体がヘンだよぉ……。」
「……オレもだ」
「乱馬も?」
「あぁ、笑っちまうぐれぇにな」
「フフッ」
「な、何だよ!!何が可笑しいんだよ?」
「なんとなくよ」
「うっせぇ」
クスクスと笑うあかねに釣られるように、オレも微笑むと自然に互いが唇を近付けた時だった。
"コンコン"
"コンコンっ"
「は?」
オレ達の部屋の扉を叩く音が、外から何度も響いた。
「ね、ねぇ、ここの部屋じゃない?」
「……ああ」
あれだけ甘味に満ちた空気が、一気に凍りつきオレは音の鳴る方を睨んだ。