short

□秋空
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乱馬視点




「朝かすみさんが言ってたじゃねぇか」

「そうだったっけ?ごめん。今日どうしても用事があるんだ」

まただ。
昨日もオレが放課後に誘ったラーメンを忘れて、ゆか達と遊びに行きやがった。

「ったく。じゃあオレが行くよ」

学校へ行く前に、借りてた本を東風センセに返して欲しい、ってかすみさんに頼まれてたじゃねーか。

「ホント?ありがとう!」

「いいよ、別に」

結局、オレが行かなきゃなんねぇ。
今度絶対なんか奢って貰わねぇと気がすまん!




「なるほど、だからあかねちゃんが忘れっぽいって事?はい、どうぞ」

「そーなんだよなぁ。あっ、スイマセン」

東風センセは椅子に座ってるオレに、煎れたばかりのお茶を手渡して、茶菓子を棚から取り出した。

「珍しいね。あかねちゃんらしくないな」

「いつもの事ですよ。アイツどんくせぇし」

「ハハッ。確かにおっちょこちょいだけど、忘れっぽくはないよ」

「でも、なんか上の空っていうか‥聞いてねぇっていうか」

「ボーッとしてるんだ」

「そうなんだよな」

東風センセは腰掛け、お茶をすすりながら、何かを悟るように頷いた。

「乱馬くん最近あかねちゃんの事、ちゃんと大切にしてる?」

「へっ?」

笑顔なのに心透かされてるような東風センセの眼力に、心当たりがなくてもドキッとするんだよな。

「心当たりがあるんだね」

「そんなことねーよ!‥多分」

「だったら問題ないけど。乱馬くんは"女心と秋の空"って言葉を知らないなかな?」

「女心と秋の空?」

「そう、秋の天気と女の人の心変わりを掛けてるんだけどね‥」

「秋の天気って?」

「‥変わりやすいって事だよ」

「‥‥変わりやすい?」

「そう。女心も変わりやすいって事だよ」

まさかあかねが?そりゃないだろ。

でも言われてみれば、ぼーっとした後にため息なんかついてたような‥

「東風センセ、オレそろそろ帰えるわ」

「そう?これ、悪いんだけどかすみさんに渡してくれるかな」

「はい」

手渡された本を鞄に入れて、立ち上がったオレを東風センセは外まで見送りしてくれた。

「気を付けて。あかねちゃんと仲良くね。乱馬くん」

「‥ご馳走さまでした」

オレは東風センセに挨拶を済ませて、病院を後にした。
あかねに限ってそんな事はねぇって思ってるのに、段々と歩く速度が上がる。

あーっ!くっそー!あかねの浮気者!
なんでオレがこんなに振り回されてんだ!もう知らねぇからな!



とは言えど、オレは家に戻って直ぐに、あかねの部屋の前にいる。

「‥」
確かめるワケじゃねーし。あかねの部屋で読みかけた漫画を取りに来ただけでいっ!

「おーい、入るぞ。あかね!!」

勢いよくドアを開けると、あかねが驚いた表情で鏡の前に立ってた。

えーと‥そんなワンピース、見たことないんですが。
大体こんな時間からお洒落するか?

「アンタね、返事もしてないのに勝手に入ってこないでよ!」

「‥何処か出掛けるのか?」

「もうっ!人の話聞いてるの?」

「‥‥あかねの部屋に読みかけの漫画があったから続き読みたくて」

「漫画?」

「あっあれだ」

オレの目的である、ベットの下にあった漫画を手に取りベットに腰かけ、読みかけてたページまでペラペラと捲って読み始めた。

チラッと横目であかねを見ると、鏡に夢中でオレの事なんかムシだぜ。
ちっとも漫画の内容が頭に入ってこねぇ。
女の子っぽいワンピースからスラッとした色白の太ももがやけに際立って、目が釘付けに‥‥

「何よ?機嫌悪いわねっ!」

「わ、悪くねぇーよ」

やべっ!見てたのバレた?
慌てるオレにあかねは更につっかかる。

「なんなのよ?いきなり人の部屋に来たかと思ったらいきなり漫画読み出して、その態度?」

「‥‥あかねこそ」

「アタシが何したっていうの?」

コイツ、ホントわかってねぇな!

「‥あかねだって最近話しかけても上の空のクセに。今日だってあかねの部屋に漫画置きっぱなしにしてたって話、オレしただろ?」

「‥したっけ?」

「ほらみろ」

「‥ごめん」
やっぱりだ。オレの話、全然聞いてねぇ!
謝れると、逆に辛いじゃねーかよ。

「‥今から誰かと会うんだろ?」

「え?」

そんなお洒落して、誰に見せたいんだ?

聞くつもりじゃなかったのに、もう止まんねぇ。

「だって、そのワンピース見たことねぇし」

「ち、違うわよ。今日はただの試着よ」

「じゃあいつ会うんだ?」

「誰とも会わないわよ」

「うそつけ!あかねはソイツの事が、その、、す、すきなのか?」

「はぁ?」

「誤魔化してもわかるんだからな。だから最近ぼーっとしるんだろーが」

「だからそうじゃなくって‥」

「この尻軽女!」

「なんですって??だから違うって言ってるでしょーが?」

「‥‥」

「何よ?信じてないでしょ?もう」

あかねは一つ大きくため息をついて、着ているワンピースの事を話し出した。

なーんだ。そりゃそーだ。
あかねが器用に、お洒落して男と会うなんて、出来るわけねーか。
別に心配してたワケじゃねーし。
東風センセがあんな事を言うからさ、ちょっとは疑ったけど‥

"あかねちゃんを大切に‥"

そうだよな。た、たまには優しくしてやんなきゃな。

「だ、だったら、デ、デートしてやるよ」

「え?」

「だから、デートしてやるって言ったんだ!!」

「乱馬‥」

驚きながらも照れるあかねがすげぇ可愛くて、オレは抱き締めずにはいられなかった。

「あんまり心配させんなよ」

「‥アタシ、何か心配させるような事した?」

その言葉で、オレの中のスイッチが切り替わる音がした。
呑気なあかねに、オレがどれだけ振り回されたか、解らせなきゃ気がすまねぇ。

「‥もういい‥」

オレはあかねをベットに押し倒した。
既に薄暗い中、弱々しく秋空の光が
あかねを照す。

困った顔が色っぽく感じるのはオレの勘違いか、それとも‥。

どっちだっていいや。

今あかねはオレの胸の中なんだから。



「買っちゃった‥」


アタシは自動ドアまで見送りしてくれたshopの店員さんから袋を受けとって、お店から出た。
その袋の中身は先週から気になってたワンピース。
一目惚れだったんだけど、予算オーバーで一度は諦めた。
あれからというもの、このワンピースが頭から離れなかったの。

あ〜!早く着たい!!

アタシは駆け足で家に帰った。
だって、自分の部屋でもう一度着てみたいんだもん!

「ただいまー!」

「おかえりなさいあかねちゃん。あら、何か良いことあったの?」

「へへっすっごい可愛いワンピース買っちゃった」 

「良かったわね」

「うん。着てみるんだ」

「だったら後で見せてね」

「わかったわ」

かすみお姉ちゃんに早く見せたくて、アタシは急いで部屋に戻り、袋からワンピースを取り出した。

「‥やっぱり、カワイイ!」

手に取ったワンピースは、ジーンズ素材で、ミニスカート。裾がふわっと拡がるようになってて、ブーツにもヒールにも合わせれそう。
やっぱり買って良かった!

早速、着替えて鏡の前に立ち、くるっと回って後ろのシルエットもしてみた

「いいっ!」

「おーい、あかね入るぞ」

夢中で鏡を見ていると、ノックと同時に乱馬が入ってきた。

「アンタね、返事もしてないのに勝手に入ってこないでよ!」

「‥何処か出掛けるのか?」

「もうっ!人の話聞いてるの?」

「あかねの部屋に読みかけの漫画があったから続き読みたくて」

「漫画?」

「あっあれだ」

乱馬はベットの下にあったその漫画を手に取りベットに腰かけ、読みかけてたページまでペラペラと捲って読み始めた。

乱馬のばかっ!
アタシの事はムシなわけ?
このワンピースにもコメントしてくれてもいいんじゃない?
似合ってるよーとか、何もないの?
それも、何でここの部屋で漫画を読むのよ??

「その漫画、乱馬の部屋で読めばいいんじゃない?」

「いーじゃねぇか。別に」

乱馬は漫画を読みながら、アタシを見ず不機嫌に答えた。

「何よ?機嫌悪いわねっ!」

「悪くねぇーよ」

「なんなのよ?いきなり人の部屋に来たかと思ったらいきなり漫画読み出して、その態度?」

「‥‥あかねこそ」

「アタシが何したっていうの?」

「‥あかねだって最近話しかけても上の空のクセに。今日だってあかねの部屋に漫画置きっぱなしにしてたって話、オレしただろ?」

「‥したっけ?」

「ほらみろ」

確かにアタシは最近上の空だったかもしれない。だって、このワンピースが頭から離れなくてずっと悩んでたんだもの。

「‥ごめん」

「‥今から誰かと会うんだろ?」

「え?」

「だって、そのワンピース見たことねぇし」

「ち、違うわよ。今日はただの試着よ」

「じゃあいつ会うんだ?」

「誰とも会わないわよ」

「うそつけ!あかねはソイツの事が、その、、す、すきなのか?」

「はぁ?」

「誤魔化してもわかるんだからな。だから最近ぼーっとしるんだろーが」

えっっっ!なんかスッゴく誤解してない!?なんでそうなるのよ?

「だからそうじゃなくって‥」

「この尻軽女!」

「なんですって??だから違うって言ってるでしょーが?」

「‥‥」

「何よ?信じてないでしょ?もう」

どうして乱馬が疑ってるのかよくわかんないけど、アタシが何故、上の空だったか説明をした。

「なんでぃ単純なヤツ」

「悪かったわね、単純で」

説明をし終わると、からかうようにアタシをばかにした。こうなるのがわかってたから言いたくなかったのに。

「でもさ、その服、来ていく所がないのはもったいねぇな‥」

「そうなのよね」

「だ、だったら、デ、デートしてやるよ」

「え?」

「だから、デートしてやるって言ったんだ!!」

「乱馬‥」


乱馬から、こんなストレートに言われた事なくてアタシは少し驚いた。

「い、嫌なのかよ!嫌なら別に‥」

「嫌なワケないわよ。嬉しいわ」

「ホントか?」

「うん。楽しみ」

本当に嬉しくて笑顔で答えると、乱馬はアタシを抱き締めた。

「乱馬?」

「あんまり心配させんなよ」

「‥アタシ、何か心配させるような事した?」

「‥もういい‥」

そして、そのまま乱馬はアタシを布団に押し倒した。





「あら?あかねちゃん。ワンピースは?」

「ご、ごめんお姉ちゃん。今度見せるね」

「そうなの?楽しみねぇ」

もう!乱馬のばか!
買ったばかりのワンピースがしわくちゃになったじゃないのぉ!!
絶対許さないんだから!!

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