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□Healing
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「あぁ……癒されたいわ」


女とは、なんでこうも癒されたがるんだ?

「ったく、帰って風呂でも入りゃ癒されるだろ?」

「何いってんのよ!!そもそもアンタが悪いんでしょうが!」

「おめぇが言い出したんだろ?」

いつもより遅い時間での帰り道、オレの通学路でもあるフェンスの上を歩きながら、文句言ってるあかねを見下ろした。

「アタシはアンタの為を思って言ったんでしょ!!」

授業中に隣の席のあかねと些細な口論に火がつき、小声で話していた声もいつのまにやらクラスの奴等が振り向く程の大きな声になっちまってて、授業妨害だと今まで先生に説教をくらってた。
優等生のあかねは怒られ慣れていないのか、申し訳なさそうな顔して真剣に先生の話を聞いていた。

「うっせぇ。大体、そんなに真面目に話を聞くから疲れんだよ」

正直、ケンカのきっかけなんざ思いだせねぇ。そんだけ、どうでもいい事だったろうな……確かきっかけはオレだったっけ?そんな事を説教中に考えていたオレに”アンタの為”なんて言われても、何のことやら??だ。

「アタシはアンタとは違うのよ!!あぁこのストレスなんとかしたい。ホント癒されたいわ」

あかねはオレをジロッと下から睨んで、わざとらしく疲れたと言わんばかりに首をクルクル回して、自ら肩を揉む。

なんだよ……。オレに肩でも揉めってか??

「このストレス、発散したい!!!あっそうだ!!ねぇ乱馬。稽古、付き合ってよ」

わざとらしいヤツ。そんなことだと思ったぜ……。

「やなこった。そもそも癒されたいんだろ?稽古を付き合ってなんで癒されるんだ?」

「アタシにとってはそれが癒しなの。ねぇお願い!!乱馬ってばぁ」

駄々をこねる子供みてぇなあかねに、オレはため息をついた。

「わぁったよ!!」

「やったぁ、早く帰ろ」

さっきまでの足取りがウソみてぇに喜んで、あかねは歩く速度を上げた。
結局それが目的だったんだろ!!って言いてぇ所をぐっと堪えた。
たまには付き合ってやるか……。



実は、少し前までオレはあかねとの稽古を避けてきた。
まぁ相手になんねぇっていうのもあるけど、攻撃せずにかわすだけだと不満を言い出すのが嫌だった。
でも、とあるきっかけで、たまには悪くねぇなと思うようになった以来、何回かに一回は受けてやっている。


「お待たせ!!乱馬」

「あぁ」

先に道場であかねを待っていると、長シャツと七分袖のズボンに着替えてやってきた。

「じゃぁ早速行くわよ!」

早く打ち合いたいあかねは、ウォーミングアップもそこそこにオレと向き合って一礼をし左腕を上げて構える。

「気が早ぇな……。」

「はぁっっっ!!!!」

オレの呟きも耳に入らねぇあかねは駆け出し、いきなり右腕を突きだす。
オレはスルッと右側にかわし、あかねの背後に着く。
それをお見通しと言わんばかりに、足を後ろに蹴りだしそれをジャンプでかわして距離を取る。

「早く来なさいよ!!」

「じゃぁ、早速オレも行くぜ。はっっ!!!」

「くっ!!」

今度はオレから構えているあかねに向って腕を突きだした。
勿論、あかねでもかわせる程のパンチだ。
予定通りにかわすあかねに幾つか仕掛ける。

どれだけの力を出しゃ、あかねが気持ちよく汗を流せるかぐれぇ簡単にわかる。
あかねはオレの期待通りに真剣な面持ちで向かってくる。

「はっ!!」

「てやぁ!!」

「もう終わりか?あかね」

「まだまだぁ!!」

「来いよ」

悔しそうにオレを睨むあかねを煽るように、手で招いた。

「か、覚悟しなさい!!てやぁ!!」

本当はしんどいクセして強がるんだ。コイツは。

「はぁ!!」

さて、そろそろ決着つけてやるよ。あかね。

突進してくるあかねが渾身の一撃と言わんばかりに腕を振り上げた。オレは瞬時にあかねの直ぐ後ろに立つ。

「後ろガラ空き」

「まだまだ!!」

くるっとあかねが後ろを向くと、オレとの距離が近過ぎたのに驚き、後ろに怯んだ。
それを追うように迫ると、あかねは後退しながらもパンチを繰り出す。

「ちょっと!!!打って来なさいよ!!!」

どっちが攻めてんだか……。確かにあかねはフツーの奴等より強い。でもそれを過信するとそれが仇になるって事をコイツはわかっちゃいねぇ。だからオレはおめぇから目が離せねぇんだよ。
男はいざとなりゃ、欲しい物の為にすげぇ力を出す生きモンだ。

「打っていいのか?」

「い、いいわよっ!!!」

背中が壁にドンっと触れて、ようやく自分が逃げ場のない事に気付いたあかねを両腕で囲んだ。
ほらな、もう逃げ場はねぇんだ。

「隙あり」

「きゃっ!!!」

身動きも取れず逃げきれないと観念し、目をギュッと瞑ったあかねを両手で強く抱きしめ、弱点のかわいらしい小さな耳に唇で触れて囁いた。

「オレの勝ちだな」

「わ、わかったわ。アタシの負けよ」

肩を小さく震わせ、力が抜けていく身体をを支える様に腰へと腕を回す。

「じゃぁ10時頃には部屋に行っから」

「……な、な?」

「稽古付き合ってやったんだから、次はオレだろ?」

「そ、そうだけど……。」

「あぁ、あかねに癒されてぇな」

「……。」

胸の中のあかねは何も言わず、顔を赤らめ小さく頷いた。







あかねの身体を知って、どんどんと増していくオレの独占欲。
それを吐き出さなきゃ、オレだってストレス溜まるぜ。

だから稽古の時だって、オレから逃げれねぇってわからせる為に強さを見せ付ける。


それだけじゃ、たんねぇ。

「今日は覚悟しとけよ」

「んっ!!!!」

汗ばんだ首元を吸い付き、小さな痣を付けた。

朝までゆっくり身体に教え込んでやっからな。


「たっぷり癒してもらうぜ。あかね」

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