☆長編

□KEEP 2
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「お客様、どなたかお探しですか?」

笑顔で話し掛けてきた店員に、オレは詰め寄った。

「おい、ここにショートカットの女が居ただろ?」

「と、言いますと?」

「目がクリッとして、色白で細身で背がこれ位で!」

オレの質問に圧倒されている店員にあかねの特徴を手振で説明しても、伝わらなねぇ。

「だからだな、見た目より気が強いくクセして、でも弱いっていうか」

「はあ、」

「だから、わかんねぇのかよっ?」

オレの説明に困惑した店員へ更に詰め寄った時だった。


「そんな説明じゃわかんないわよっ」

店の奥から、探していた声の持ち主がフラリと現れた。

「あ、あかね!」

「もう来ないかと思って、電話で他の友達呼んだ所だったのよ」

「え?」

「仕方ないでしょぉ!予約しちゃってたし、一人じゃ食べ切れないしぃ」

「だ、誰か来るのか?」

あかねはオレに笑顔だけでコクンと頷き答えた。

……ウソだろぉぉぉっ!?

今日のこの日をどれだけ楽しみにしてたかってぇのぉ!!!!

そ、そりゃ確かに社交辞令かもしんねぇけど、二人っきり、プライベート、夜、これだけのキーワードが揃ったら、何かを期待するのが男だろ????

なんでもっと早く事務所を出なかったんだァァっ!!!!

「折角なのに、ホントに残念だわ」

「あぁ。こんなに残念なことはないぜ」

「さあ、食べましょう」

「え?」

「誰も捕まらなかったけど…。乱馬が来たから」

え?誰も来ねぇって事だよな……。


「……そっか、じゃあ食うか」

「うん」

顔を赤らめたあかねがオレの服の裾を持って、座っていた席に案内してくれる。
向き合って座ると、店員がオレ達に酒を注いでコースの説明もそこそこに席を離れた。

「実は先に少し飲んじゃってるんだ」

「飲みすぎんなよ!」

あかねに忠告だけして、注がれた酒を一気に飲み干した。

「また乱馬にお世話してもらわなきゃね」

「散々世話してやったのに記憶がねぇあかねを?」

「悪かったわね」

きっとあかねは、ほろ酔いなんだろう。
いつもよりやわらかい雰囲気で、思ったより緊張することなく、話もそこそこ盛り上がる。
飯も旨いし、滅多と飲まねぇワインも飲めて気分が良くなってきた頃だった。

「それにしても、遅かったわね。1時間以上待ったんだからねぇ」

「わりぃ、社長に呼び出されちまって」

「そっか。てっきり忘れられたのかと思ってたのよぉ」

「忘れるわけねぇだろ!!」

「じゃあ楽しみにしてたぁ?」

「そっ……だな…。」

急に不機嫌さを匂わす顔してると思ったら、いきなりドキッとするような質問に詰まりながら素直に答えちまった。

「えへへっ、ホントはアタシもぉ」

「えっ?」

おいおいおいおいっ!な、な、なんだよっ!
か、か、か、かわいいじゃねぇかぁっ!!!!

「ねぇ、乱馬、アタシ…。」

ほんのり赤いほっぺたを更に赤らめてあかねはオレを見つめた。

"ごくんっ"

思わずオレの喉がなる。

「な、なんだ?」

「アタシ、乱馬に…。」

「オ、オレに?」

グラスを持つ手に力が入った。

「乱馬に………。今日もお世話になるかもぉっ。なんだか急に酔っ払ったよぉ」

「はっ?」

「なーんでだろぉ?へへっ」

なーんでたろ?じゃねぇよっっ!
期待しただろーがっ!!

「オマエ飲み過ぎなんだよっ!」

「えーそんなに飲んだかなぁ?おかしいなぁ?ひっく」

「飲みなれねぇワインを調子こいて飲むからだ!ったく」

一気に気が抜けたオレは机に見を乗り出して、あかねのワイングラスを奪い取った。

「もうお終い?」

「終わりだ、終わり。そろそろ帰るぞ」

「ふぇーい」

元気よく手を挙げ、そのまま机に塞ぎこんだまま、目を閉じたあかねをそのままにしてオレは会計を済ませた。


「お連れの方、大丈夫ですか?」

「問題ないです。ハイ。ご馳走でした」

「有難うございました」

店員に苦笑いで礼を伝えて、自分のうでを枕にしてウトウトしているあかねを抱え、店を出た。

「おい、あかね帰るぞ」

「……うん…うっ!ちょっと気持ち悪いかも」

「マジかよっ!!と、とりあえずちょっとだけ我慢してくれっ!」

「うぅぅっ」

口元に手を当てるあかねを、こんなに寒い外で背中をさする訳にもいかねぇし、落ち着ける事務所にあかねを連れてく事にした。
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