本気で捏造する平助√花終幕
□第四話
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「ーー…今日はありがとう」
この辺で良いよと言い、律儀に頭を下げるりりにそうかと返した。
先程土産に買った饅頭の袋を渡すと「持たせちゃってごめんね」と、これまた律儀に。
「んな、いちいち頭下げんなよ。俺が勝手に持ってたんだからよ」
「……うん」
はにかむように笑い、こくりと頷いた。
本当は世話になってるっていう宿まで送りたい気持ちはあったが、此奴にも事情があるのだろう。深く追求はしない。
「……じゃあ、気を付けてな」
「…うん。…あ、あの、平助くんっ」
背を向けた途端呼び止められて振り向くと、不安そうな表情のりりがいた。
「どうした?」
慌てて歩み寄り、頭に手を置いて宥めるように問うと、俯きながら小さく口を開いた。
「……あの。また、会えるよね…?」
「………あぁ。勿論」
ぽん、と軽く頭を叩いて答える。
すると、いくらか表情が和らいだようだった。
「今日は食いもんばっかだったからな。今度はもう少し色気のあるとこ案内してやるからな!」
「うん、楽しみにしてる!」
そうして、今度こそ屈託ない笑顔で別れた。
…本当は追いかけたい気持ちもあった。
が、背を向ける。
彼奴が何処に帰り、どんな奴が迎えるのか。
「ーー…おぅりり!」
………。
背後に聞こえた男の声に、足が止まった。
…振り向きたい、けど。
見るのが怖い、気がして。
「………魁先生が聞いて呆れるじゃねぇか」
自嘲し、足を再び進めていく。
…次に会う約束はしなかった。
ただ『また会える』とだけ、言い交わし。
それでもきっと大丈夫だ、と。
根拠のない自信はあった。
……今はまだ、互いに知らないままでいた方が良いこともある。
…そんな、気がした。