本気で捏造する平助√花終幕
□第四話
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ーーお団子を食べた後、平助くんの案内で町を散策して歩いた。
人通りが多くてすれ違う人によくぶつかりそうになったけど、斜め前を歩いている彼のおかげか、不思議とそうなることはなかった。
ふわふわ、陽に透けたポニーテールが揺れている。時折こちらを確認するように振り向いては、目が合う度微笑んでくれて。
……ふと、広い背中を見て。
急に彼が頼もしい男の人なんだと意識してしまう。
もちろん、『お兄さん』みたいな頼もしさは元々感じていたけれど。
……今は、『男の人』…って感じ。
上手く説明出来ないけど、わたしの中で彼の見方が変わってしまったのは事実だ。
「ーー…あ、そうだ」
「…きゃふっ」
不意に立ち止まるものだから、考え事をしていたわたしは見事に鼻先を彼の背中にぶつけてしまった。我ながらなんて間抜けな悲鳴だろう…。
「…わっ、大丈夫かぁ!?」
慌てて気遣う彼に笑って見せ、心配ないと首を振る。
「そうか…、ごめんな」
ホッとしたようにため息を吐いて、ポンポンと、頭を撫でるように叩いた。
「…平助くん、ここは?」
落ち着いた後、立ち止まった先に建っていたとあるお店を見上げる。
「菓子屋。ここの饅頭が美味くてさ」
土産にどうかと促され、頷きその玄関を潜った。
「……いらっしゃいませ…あら、」
藤堂さんやないの。
平助くんを見て、嬉しそうに言った。
……黄色い声っていうのは、こういう声だろうか。
店先から出てきたのは、わたしとそう変わらないくらいの女の子だった。
「久しぶり!いつものを十頼む」
「はい、おおきに」
彼女は京都訛りの可愛らしい相槌を打ちながら、手際良く饅頭を紙袋に詰めていく。
「ここの饅頭はこしあんが美味いんだ」
「あら、粒あんも美味しいどすえ?」
わたしに対して説明してくれた言葉も、目の前にいる彼女が拾って返してしまう。
…わたしはただ「へぇ…」とだけ呟いて、こしあんと粒あんを五個ずつ買った。
「……こちらのお嬢さんは?」
わたしに直接袋を手渡しながらも、問いかけは平助くんに向けられる。
おずおずと受け取りながら軽く会釈すると、明らかに平助くんに対してとは違う、好奇の目線で下から上まで見つめられた気がした…。
「りりってんだ。最近京に来たばっかりでさ。あんたと同い歳くらいだし、気が合うんじゃねぇかって」
「へぇ…」
「…あ、あの、よろしくお願いします…」
平助くんが明るく話しているのに、ワントーン低めの声で返事をする彼女に圧倒されて、つい俯いてしまった。
……ああ、この人。
平助くんのこと好きなのかなぁ。
こういう時の女の子の勘って、よく当たるんだよね。
ーー…結局、彼女とは一言も言葉を交わせずに店を後にした。