治そうにも治らないんです!BOOK

□緩やかな
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部活が終わり、家に帰った。

「お母さん、ちょっと征十郎のとこ行って来る」

「はいはーい」

鞄だけ置いて向うはお隣の赤司家。
チャイムを鳴らすとおばさんが出てきた。

「あら、いらっしゃい。征十郎なら今シャワー浴びてるから、部屋で待っててね」

「はーい」

私は階段を上り、突き当たりの征十郎の部屋に入った。

「だーいぶ!!」

征十郎のベッドに、ばふっと音を立てて倒れこむ。
あーふかふかだー気持ちいい〜
皆でなかよくぽかぽかお風呂〜あったかい布団で眠るんだろな〜僕もかえ〜ろおうちへ…
帰っちゃだめだ!!
懐かしい歌が脳内を駆け巡ったけど、今日は相談しなきゃ帰れない!!

「自分からベッドに行くなんて、襲われたいの?」

振り向いたらドアの前に短パンはいて上半身裸の征十郎が立っていた。

「ちょ!ばか服着てよ!!」

征十郎は細い。でもスポーツをやっている人間だからそこそこの筋肉はついている。
朝みたいに気を失いかけることは無いにしても、見たくないものは見たくない。
手で顔を覆いながら必死に訴える。

「……。わかったから、ほら」

征十郎が服を着て、椅子に座る。

「で?相談なんだろ?」

ドキッと心臓が鳴った。
手が小刻みに震えて、呼吸がしづらい。

「征十郎……」

一言ずつ言葉をこぼす。
青峰君のこと、知りたいの。
青峰君が、好き。
私は青峰君が……

「好きなの」

「え……」

「え?」

征十郎の拍子ぬけた声に顔をあげた。

「青峰君のこと、好きなの」

視界が歪み、涙がこぼれた。

「今日ね、好きって言ったの。でも返事が無くて、私どうしたらいいんだろうって。征十郎ならベストな答え、くれると思って」

涙をぬぐいながら不安を吐き出した。

「……そんなに大輝が好きなのか?」

コクン。と首を縦に振った。
征十郎はため息をついて、お前の気持ちがそれならそれでいいと言ってきた。

「征十郎……」

「これはお前と大輝の問題だ」

ポンと頭に手を置かれ、言葉と共に何か拒絶されたような感じがした。

「……そうだよね、うん、ごめん。また明日」

カチャリとドアをゆっくりと閉めた。
おばさんにあいさつをした。
家に帰ってベッドに倒れると同時に意識を手放した。


2012/09/17





緩やかな拒絶だったり、変化だったり。


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