何処からか来た夢

□PLCB
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「マスクが邪魔なら閉まっていいんですよ?」
「なんなら剥ぎ取ってやろうか」
「余計なお世話じゃ…!」
「そう言うなよ…ほら」
「っ!止めろ!」

太股を撫でられマスクの存在を妨げる。普段撫でられたりなどしないそこを、まさか男に触られ、しかもそれで息を熱くしてしまう自分がいることに酷く嫌気がさす。熱気が内側に籠って気持ち悪い。マスクを外してしまえばいいもののそれは薬の効果を肯定しているようなものだ。況してやそれが媚薬となれば。
ゆるゆると指先は太股から付け根を行ったり来たり。必死に声を抑えているが実際は油断したら直ぐにでも漏れてしまいそうだ。これも全部媚薬のせいだと、そう自分に言い聞かせる。

「んーなら無理矢理にでも外させようかな。えーっとハッチはと…ここか」
「ひっ…!?そ、そんなところ触るんじゃないっ!」
「ホイルジャック…少し勃っているようだが…クク、なんだ気持ち良かったようだな」
「っ!」
「情けねぇコネクターだな!ほれ、こうされるといンだろ?」
「っやめ、止めるんじゃ!」

コネクターを鷲掴みゴシゴシと上下に擦られれば、そりゃあ誰だって嫌でも反応する。少し乱暴で痛いところはあるが、それでも自分の下半身は律儀に反応を示す。まだまだ自分の息子は元気なのか、と感心している場合ではない。
擦られるだけならまだ良かったか、先端部分を引っ掻かれたり付け根を締め付けられたりと、弱い部分を責め立てられ声が抑えきれない。マスクが、鬱陶しい。

「っぐ……は…ぁ、っ…」
「いい加減マスク閉まったらどうだ?老いぼれのハスキーボイスを聴かせておくれよ」
「ふざけ、るんじゃない…ワシは、マスクオフは、せんぞ…!」
「チッ…頑固なクソジジイだなぁ」
「まあ落ち着け。マスクオフしないなら、もっと追い詰めればいい。下も開けろ」
「!?」
「へへっ、了ー解!」

パッとコネクターから手を離され、さらに下に手が伸ばされる。嫌だ止めろと身を捩り抵抗を示すが一味はそれを嘲笑うとハッチを開け一気に指を二本挿入した。淵がピシリと皹を入れ、痛みが伴う。

「ぐあぁぁ…!っう、ぐぅ…!」
「思った通りギッチギチだな…この際だ、開発してやるよ!」
「あ、ぁぁ…それだけは、止めてくれ…!っつぅ…は、ぁ!」

指がグチリと前後に動かされ切れた淵が擦れる。血のお陰か潤滑液でも滲み出ているのか、割りとスムーズに指が動く。未経験のそこはただただ気持ち悪い感覚を味わうだけだ。
そのうち手の空いている一味が足の拘束具を外し、そのまま足をガバッと広げた。なんちゅーみっともない格好。こんな外道な奴らに秘部を晒すなんて長い生涯の中で唯一の赤恥だ。
一味はお陰で指が動かし易くなったとか、老いぼれの恥ずかしいところが丸見えだとか、言葉でワシを責める。この若造は本当に卑しいやっちゃ。

「どうだいホイルジャック…だいぶ慣れてきたかい?」
「く…そんなわけ、なかろう…ん、うっ」
「とか言って。あんたのココ、潤滑液でグチョグチョだぜ?」
「は……嘘、じゃ…」

嘘と言い張るが一味はわざと音をたてるように指を出し抜きする。グチョグチョと響く卑猥な音に耳を塞ぎたくなった。

「媚薬だけの効果じゃないだろう、これは。よほど気持ちいいと見られる」
「ち、違う…!ワシは、気持ちいいなんて思ってない…!」
「なら体に聞いてみるか。老いぼれ、力抜けよ」

一味はよいしょと寝台の上に乗ると、自分のコネクターを露出させワシの足を持ち上げた。まさかとは思うが…頼む、嘘であってくれ。
だが現実というものは時にあまりにも無残なもので。

「ああぁぁぁあああっ!!」

ズプズプと受容器に入ってきたのは紛れもないデストロンの一味のコネクター。指二本から圧倒的に質量の違うコネクターを奥まで挿入れられ、意識が飛びかけた。
はーはーと掠れた排気が喉を通り抜ける。「うへぇ〜中キッツイなぁ〜」とこの若造は軽く揺さぶりながら失笑した。怒りよりも先に悲しみが込み上げる。

「ヒヒッ、安心しなぁ老いぼれ!直ぐに天国見せてやんよ!」
「くぁぁ!うご、動くな…あっ!」

ガツガツと激しく揺さぶられ痛い、奥も側面も心も、全部痛い。異物感に吐き気が沸く。この若造は自分の欲を発散させるためにしかやっていないと見える。こういう行為は本来愛する者とやるべきだろう。デストロンに言ったところで無駄なのは解っているが。
執拗に奥ばかりを攻められショートしそうだ。受容器を抉る若造の欲の塊はさらに質量を増す。苦痛に顔を歪めた、その時。

「―ひぁっ!な、なんじゃ、今のは…」
「ん?ああ、ここか?」
「あっ!っいや、そこ、何か、変じゃ…!」
「前立腺だな、老いぼれ。クク、なんだよ。気持ちいいなら声出せよ!」
「ぅあっ!やめ、や、くっ、あっ、あっ!」

そこを突かれると先ほど全くと言っていいほど感じなかった快感がビリビリと体を駆け巡る。年甲斐もなく高い声で喘ぐ。もう声を抑えるのも億劫になっていた。
だいぶ気持ちよくなってきて頭がふわふわしてきた。目から涙が零れ視界が霞む。壊れる、壊れてしまう。

「あっ、ふぁ、いや、いやじゃ!あ、あぅ、も…もぅ、や…」
「おや、ホイルジャック。いつマスクを閉まったんだ?」
「えっ…あ、そん、な…はっ、あ、あっ、やめ、はげし、はげし、ぃ…!」

もうマスクとかなんだとか殆ど意識がない。そう若くないこの機体にとって快感というものは、あまりにも刺激が強すぎるもので、もう声の制御すらまともに出来なかった。

「あー、やべ。もう出る。老いぼれ、中に出すぞ」
「ひゃ、ぃや…いやじゃ、中には、出すな…やっ…やめ、ぅあっ、あぁぁー!あっ、あぁー、ぁ…あつ、ぃ…!」

ドプリと中に熱い液が注がれ、自分もその刺激で達してしまう。腹がパンパンで、熱くて苦しくて、目眩がする。
若造はスッキリしたと軽く笑いながら、やっとワシの中からコネクターを抜いた。排出される感覚に不覚にも感じてしまう。二人は声を上げて笑った。

「ハハハハ!見ろよ!こんなに出してやんの!淫乱な老いぼれだなぁ?」
「あ…はぁ……は…」
「そうだホイルジャック。良いことを教えてやろう」

カルテの男が媚薬の入ったビンをワシの目の前に持ってきた。やっぱりピンク色の液体がとぷんと揺らぐ。

「実はこれは媚薬でもなんでもない。ただのエネルゴンだ」
「…え…?」
「ちなみに今日射った薬は全部なんでもないただの液体だ」
「なん…なん、で…?」
「プラセボ効果、って知ってるか」
「…!」

プラセボ効果。プラセボとは所謂偽薬のことで、薬物そのものに効能はないが、それを偽り思い込ませることで治すという一種の治療法だ。そうか…だからこいつは執拗に容態を問い、本当に異常はないか疑わせ、思い込ませたんだ。見事に嵌められた…迂闊だった。
ちなみに体温なんか上がっちゃいないと最悪なことまで付け足された。

「だから老いぼれ、あんたは媚薬なんかじゃなくて素で淫乱ってことだ!ハハハ!この年で淫乱とは結構なこったぁ!」
「っ!」
「ホイルジャック、実験に付き合ってくれてどうも有り難う。また犯されたくなったらいつでも来い」

ハハハハ!と疎ましいこいつらの笑い声が、絶望の谷に落とされたワシを包み、無機質な部屋に木霊して消えた。





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