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□すきなの?
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あの日から、俺はちょっとおかしくなっていた。
















「スク…」
俺はスクアーロの隊服を掴んで、呟くように名前を呼んだ。
「どうしたぁ!?何かあったのか、ベル!」
俺がいつもよりテンションが低いからか、スクアーロは心配そうに大声を出した。
「ん…。ちょっと……いい?」
「……………。分かった。じゃあ、俺の部屋に来い」
何かを察してくれたのか、スクアーロは周りに気づかって俺を部屋に連れて行く。俺は黙ってスクアーロについて行った。

部屋に入ると、スクアーロはどうしたんだ。とか、何かあったのか。とか、聞いてこなかった。
俺に気をつかってるのがわかって、ああやっぱり一人前の大人なんだな。って珍しくスクアーロを尊敬した。
湯気のたったマグカップを俺の座ったテーブルの前にコトン、と小さく音をたてて置いて、長い沈黙の末、いいタイミングで俺に声をかけた。
「……話の内容はなんだ?ベル」
「………………マーモンの事」
「マーモンの事だぁ?」
「そう」
俺はうつむきながら言った。スクアーロはきっと、話の内容を一割も予測出来てない。
俺は、話の内容を思いきってスクアーロに話した。
「…スクアーロ、マーモンってさ……女なの?」
「ブッ!!!」
スクアーロは俺の言葉に、持っていたマグカップを落としそうになるほど吹き出した。
「どうなの?」
「知らねえよ…何でそんな事聞くんだ?」
「実は……」



呪解したマーモンに一目惚れしたかもしれない。



「前々から思ってたんだけど、マーモンって女なの?呪解した時がすげー女っぽいから、確信が深まったっつーか……。で、呪解したマーモンの事がいつも頭に浮かんでて……そしたらもう、いつの間にかマーモンの事意識しちゃってて………、俺、どうしたらいい?スクアーロ………」
「………」
俺が告げると、スクアーロは真剣な顔でうつむく俺を見ていた。
俺だって驚いてるんだ。あんな赤ん坊に恋するなんて思ってなかったから………。
「スクアーロ…」
「よし、分かった」
「?」
スクアーロは何かひらめいたようで、ガタンと立ち上がった。
「ベル、とりあえず、マーモンに女か男か聞いてみろ。男だったら恋じゃないだろ。………多分なぁ…。もし、女だったら…………思い続けろ……………マーモンの呪いが解けるまで」
「スクアーロ…」
「それでいいだろ」
ニィと笑って、スクアーロは俺の頭を撫でた。

俺はそれに、うん。と返事をしてスクアーロの部屋をでた。








廊下に出れば、すぐにマーモンは見つかった。小さな体で頑張って歩いている。
多分自室に戻るのだろう。
俺は後ろからそっとマーモンをすくった。
「マーモン…」
「ムム。ベルかい?―――……どうしたの?ベル」
マーモンまで心配そうに俺を見ている。スクアーロと同じだ。
そんなに俺、今、いつもと違う?
「……マーモン、部屋に戻んの?」
マーモンに聞くと、マーモンは軽く頷いて答えた。
「うん。そうだけど………ベル本当どうしたの?」
「マーモンの部屋………行っていい?…話したい」
マーモンは明らかに同様した表情だったけど、首を傾げながらも、「いいよ」と言った。


マーモン部屋に着けば、俺は単刀直入に聞いていた。
「マーモン……聞きたいことがあるんだ」
抱っこしたままのマーモンが何?と心配そうな声で俺を見上げた。
俺は、意を結してマーモンに聞いた。






「マーモンって、女なの?」


「―――っ!!?」
体を激しく震わせ、あからさまに同様したマーモン。
こういう時って、どうしたらいいか分からない……。

しばらくすると、マーモンはゆるゆりと口を開いた。

「……何で、そんな事、聞くの?」

理由を言わないとマーモンは言ってくれそうにない。
俺は、乾いた口を開き、恐る恐るマーモンに告げる。


「……………俺が……マーモンの事すきかもしれないから」


声が、震えた。
思いを伝えるのって、こんなにも勇気がいるなんて、初めて知った。
マーモンはうつむいてて、どんな表情だか分からない。けど、声は震えていた。
「馬鹿じゃないの……?」
マーモンは俺を見上げた。その顔の頬には、逆三角形には…………………………涙がつたっていた。
「マーモン、何で泣いてんの……?」
「分かんない……分かんないよ………っ!………でも、嫌じゃないんだ。この気持ち……」
泣きながら、マーモンは言葉を繋ぐ。
俺がすきかもしれない。けど本当に愛おしい小さい身体が震えてる。
「マーモン……」
俺は少し腕に力を込めた。
「ベル……僕ね、呪解した時、君が真っ先に駆け寄ってきた時、すごくびっくりしたんだ。ベルとの距離が近くて。そして、同時に、なんか、ドキドキした……」
「え…?それって………」
軽く頬を染めながら、マーモンは俺を見つめた。
「そうだよ僕も……君がすきかもしれないんだ」

「…マーモン……って事は…………」
マーモンが、俺の前で初めて笑ってた。









「そうだよ…………………………僕は……女さ」

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