OOO

□溶かしていく様にX
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Ru.Ru.Ru.Ru.Ru.Ru.Ru.Ru.





仕事中。突然俺の携帯が鳴り響いた。

電話の主は余りかかってくることのない、ばぁやからだった。





「もしもし?ばぁやどうしたの?」






俺はその電話の内容で仕事を全て投げ出して、仕事場を飛び出す事となってしまった。

















『裏口から入ってきてください。正面は塞がれてしまっております』




ばぁやの電話道理に裏口から帰宅すると、突然後藤ちゃんが俺に飛付いて来た。

思わずバランスを崩しかけたが、何とか踏ん張って持ち堪えた。

抱きついてきた後藤ちゃんは肩を小さく震わせていた。





「どうしたの?何があった?!」

「突然、庭で花の苗を植えていた後藤さんを、連れて行かれそうになったんです」





使用人の一人がそう答えた。後藤ちゃんを見ると、脅えたように眼で俺を見上げてきた。





「私がすぐ近くに居たので侵入者として輩を追い出しました。しかし・・・」

「その輩は正面の門の前で『勝手に連れて行ったのはそっちだろう!』と申しておりまして・・・
 私達ではどうしても対応しきれないと判断いたしまして、旦那様をお呼びました」




屋敷の警備員とばぁやが続けて答えた。

もう一度後藤ちゃんを見ると、今にも泣き出しそうなほど涙を浮かべていた。相当怖かったらしい。

後藤ちゃんを連れて行こうとするなんて・・・なんて奴だ。




「とりあえず、話だけでも聞こう・・・」




俺はすぐに、使用人に指示を出した。

警備員に正面の門の前に居るという男を、応接室に案内させた。

ばぁやには、後藤ちゃんを自室に連れて行って、事が治まるまで傍に居てもらうことにする。

こういう事に察しが付くばぁやは本当に出来ていて、助かる。






数分後。警備員が男2人を連れて応接室に入ってきた。

1人は侵入してきたという男。もう1人は、やたらと派手なスーツを着た男だ。

驚いたことに、侵入してきた男は、何時ぞやに奴隷市場で俺を引っ掛けた、あの商人だった。




「お久しぶりです。商人さん」

「いやいや、あの時はどうも・・・」




商人は商売するかのように、深々と頭を下げた。なにか、ありそうだ。




「実はお話がありまして・・・」

「お話より先に聴きたい事があります」

「な、何でしょう・・・・・・」




商人が勝手に話を進めようとするので、刺すように言葉を出す。

流石の商人もうろたえている。




「何で後藤ちゃんを連れて行こうとしたんですか?」

「あ、あぁ・・・」




商人は遣りにくそうに顔をしかめた。




「実は私はあれについてお話がありまして・・・ついでに聞いてくださいませんか?」




商人はあくまで他人行儀を貫いた。返ってその方がいいが。




だが、今頃何故後藤ちゃんの話を持ち込んだのだろうか。

俺はちゃんと#50,000,000#を払ったし、買ってから約一ヶ月は経っている。

後藤ちゃんもようやくココに馴染んで来た処だと言うのに・・・。





「実はあれ、こちらにいらっしゃる鴻上様が所有している物でして・・・」

「所有?」





俺は商人の隣に居る男を見た。

鴻上と呼ばれた男はどこか堂々としており、着ているスーツからして

何処かのお金持ちと見ていたが、彼は一体・・・。

すると鴻上は突然高らかと笑い出した。





「実に驚いたよ!一時的に置いておくだけのために預けた市場で、君に買われてしまうとはね!」

「えぇ・・・こちらの鴻上様は世界をまたに駆ける、鴻上ファウンデーションの創立者でして・・・
 私めが開いております奴隷市場の取引先でもあります・・・」

「その鴻上ファウンデーションの創立者が・・・後藤ちゃんの所有者だと?」

「はい・・・貴方が勝手に買っていかなければ、このようなことには・・・」





要するに後藤ちゃんに怖い思いをさせたのは全部俺の所為って言いたいわけか・・・





「ちょっと待ってくださいよ」





俺は後藤ちゃんを買った状況を包み隠さず話した。

俺がどうして奴隷市場に行ったのか。

俺が沢山の奴隷の中でどうやって後藤ちゃんを見つけたのか。

俺に後藤ちゃんのことを商人はどう説明したか。

臓器や道具でしか役に立たないと説明したこと。

はっきり誰かの所有物だと説明していないこと。

説明していない上で商人は後藤ちゃんが入っている檻の鍵を開けたこと。

俺の話を商人は息を飲んで聞いていたが、鴻上は不思議と冷静に聞いてた。

俺が話し終える頃、突然、商人は逆上したかの様に叫んだ。





「俺は売るなんて一言も言っとらんぞ!」

「売らないとも言ってない!それに商人さんは返品できませんとか言ったじゃないか!」





これは商人は言葉を詰まらせるしかなかった。本人が言った言葉なのだから。

俺と商人が言い争っていると、鴻上は高々と笑い出した。

コレには流石にぎょっとした。





「面白い!実に面白いよ!君はっ!」





黒くてごつい太い指が俺を指差した。鴻上は白い歯を見せて笑っている。





「君の言いたいことはわかった!返す気はないのだろう?」

「察しがいいようで、助かります」





俺は俺を指差す指を掴んで降ろさせた。だが、鴻上は腕を伸ばし再び太い指で俺を差した。






「譲る気は無いかね?」

「譲る気は無いですね」






その質問に鸚鵡返しのように返答する。

すると、鴻上は俺を指差していた指の先を天井に向けた。





「1億出そう。彼はそれ位の価値がある」

「要らないですよ」1億なんて。

「俺は後藤ちゃんが欲しいんです」






譲る気は無い。そう言った筈だ。俺は。






「俺は50,000,000出しましたが、正直、彼の金額は俺には決められません」






俺は腰掛けていたソファから腰を浮かせた。






「どちらに付いて行くか・・・後藤ちゃん聞こうと思うんです・・・どうですか?
 彼の気持ちも大切だと思いますが・・・?」






俺の申し出に「いいだろう。面白い」と、鴻上は引き受けた。

隣に居た商人は何か言いたそうにしていたが、自分の失態を思い返したのか黙り込んだ。
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