OOO

□溶かしていく様にT
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俺は伊達明。

つい先日、俺の爺さんが死んだ。

一人っ子だった俺は、故郷の国で起きた内戦で両親もろとも、亡くなってしまった。

それは俺が小さい頃の事で正直、ほとんど覚えていない。

物心がはっきりし始める頃から爺さんと一緒に暮らしていた。

爺さんは世界で有数の石油王で、持ってる土地も膨大だし、大金持ち。

だから全て継いだ俺は難なく暮らしている。仕事も引き継ぐことになったけど。



ある時屋敷の召使いが個人の事情で、故郷に移住しなくてはならない事になり、俺の側近で働く人がいなくなってしまった。

流石にこれは困る。

身の回りのことを大抵任せていたため、突然やることが増えると仕事に支障が出る。

何とかしなくては。

俺はふと思い当たって、街のほうへ足を運んだ。

そこで彼とであった。















俺は来る場所を間違えてしまった。

そこら辺で商売をしている商人に



「屋敷で働いてくれる人を探しているんだ。紹介してくれる所とかない?」



そう尋ねると、いい所があると此処へつれてこられた。

辺りでは普段なら余り聞かないような会話や取引が行われていた。



「それを1000万で買おう」

「毎度あり」



そこは奴隷市場だった。何処からか連れて来られた人たちをオークション形式で売られている。

買う人は人それぞれの理由で買う。

奴隷の如く、扱き使う者。

内臓を売って、一儲けしようとする者。

よくあるのが、性欲処理の道具に使う者。しかも、異性同性関係なく。

どうやら商人は俺が奴隷が欲しいと言ったと思ったらしい。とんだ間違いだ。

俺はただ、屋敷で俺の身の回りの世話をしてくれる人を雇いたいだけなのに。



「そこの若いあんちゃん」



俺は奴隷市場で商品を売りさばいている商人に声をかけられた。



「いい商品は見つかりやしたか?」

「いや、まだ・・・イイのはないね」



とりあえず、見て周ったけどイイのはないから、帰りますをする事にした。

だが、




「そりゃぁまだこの辺しか見ていないからでッせ。あっちにイイのがありやすよ」




どうやら目を付けられていたらしい。これじゃぁ、逃げられない。

俺は、商人に連れられて市場の奥へ行った。

すると道中、奴隷の中で1人の男に目が留まった。

頑丈そうな檻に入れられ、足枷と手錠で自由を奪われている20ちょっとの青年だ。

それは奴隷としてはごく普通の光景だったが、何故か俺には彼を見た瞬間、衝撃が走った。




「あれがお気に召しやしたか?」




商人は何やら嫌そうな顔をした。彼は余りお勧めできないらしい。




「あれは奴隷として働かせるには駄目なもんです。出来ることなら臓器か道具かですかね」




あんちゃんはどんな物をお探しで?と、商人は聞いてきた。

だが、俺は全く聞こえていなかった。

ぶかぶかでぼろぼろの服から伸びる足は白くすらっと長い。その膝に顔を埋めている彼の髪は、黒くちょっと癖があり、見た目からも分るくらいふわふわ感が伝わってくる。その代わり顔は全くうかがえない。



「彼を買います」





俺の一言に商人は驚いたように目を大きくした。近くで見ても居ない、商人が全く勧めても居ない商品を買ったのだ。まるでその商品を買うためだけに来た様だ。

商人は慌てて俺を止めようとする。



「考え直したらどうですかい?まだ市場を見回ってもいませんし・・・」

「彼にします」

「いや、しかし・・・」

「彼にします」

「・・・・・・・返品できませんし、考え直しては、」

「か・れ・を・買います」




俺が強く強調的に言うとようやく、商人はしぶしぶ檻の鍵を開けた。




「出ろ」



苛立った声でたった一言、言う。だが、彼は動かない。




「出ろといってるんだ!」




商人は先ほどの苛立ちからか、怒り狂い、彼を蹴り飛ばそうとした。

同時に彼は両手で頭を庇った。

その時見えたぷっくりとした唇を見て、俺は動いた。




「止めろ、俺が買うんだ」




近くまで走って商人に低い声で言うと、商人は足を止めて蹴るのを止めた。

遣り足りない様な顔をしていた。





「立てるか?」

「・・・・・・」






俺が彼の手を取って引っ張る。思ったより細い指で驚いた。

帰ったら沢山飯を用意させないとな。




「おっと!」




彼が自分の足で立った瞬間、ふらりと身体を揺らして俺の腕の中に倒れこんできた。




「ちゃんと立たんか!!」




隣で見ていた商人が怒声をあげたが、俺がキッと睨むと大人しくなった。




「大丈夫か?」

「・・・・・・」



声をかけても全く反応がなかった。

腕の中でぐったりしているから、気を失ったのかもしれない。



「この子、もらいます」




俺は懐から小切手を取り出し、金額を簡単に書き、商人に渡した。



『#50,000,000#』




思ってもいない金額だった様で、商人は何度も見直しては、驚いていた。

俺は気を失っている彼に俺の上着を羽織らせる。

それから、商人から手錠と足枷の鍵を奪うように貰い、重たいそれを外す。

彼を自由にしてやってから、膝裏と背中に手を回して、抱き上げた。



「軽っ・・・」



彼の余りの軽さに驚きながらも、彼を連れて帰った。

俺が帰るのを商人はあたふたしながら、何も出来ずにその場に立っていた。







・・・ to be continues

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