立海


□叶わない言葉
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お前は知っているだろうか。
俺がお前のことが好きだということを...

『そろそろ、切り上げるぞー』

いつもより早い時間に部活が終わった。
部室に一気にひとがあつまる。
みんなが着替えているなか、目の前にいた仁王が口を開いた。

『のー。幸村。お主好きな子はおらんのか?』

仁王の突然の質問はいわゆる恋愛トークだ。

『何をいってるんだい。仁王。そんなのいるわけ...』

隣で着替えている真田をちらりと見る。
俺は真田が好きだ。友情等ではなく、恋愛対象として見ている。
だが真田は俺の気持ちには築かない。
当たり前だ、今まで長い間友達と思っていて、信頼も厚いしかも男になんて告白されるなんて思わないだろう。俺の思いは一生届かない。

『そんなの...いないよ。今はテニスだけでいいんだ。』

『なんや。つまらんのぉ幸村は。』

つまらないと言われても、みんながいる前で、告白なんてできないだろう。それほど真田にたいする思いは軽くない。

『なんか。ごめんね。面白い返事ができなくて。』


俺は現実を見たんだ。だからこの思いは、これから先も告げることはないだろう。

『幸村。お疲れ』

隣にいた着替えが終わった真田が俺の顔を除き混む。
いまにでも、この体に抱きつきたいし、キスもしたい。
だけど今ここでそれをしてしまえば今まで築いてきた友情はもろく崩れさるだろう。

『真田お疲れ。』

俺は本心より友情を選んだ。これからも真田を近くでみまもりたい
。友達として...

着替え終わると、みんなが部室を出ていく。俺は一人部室に残った。窓から夕焼けが差し込む。

『こんな時間か、戸締まりしてかえるか。』

部室を見渡すと、ロッカーの前にテーピングが落ちていた。見覚えのあるそれは、真田のだ。

俺はそれを拾い上げて、ぎゅっとにぎる。

『真田...好きだよ。』

自分の口からは、本人には言うことのできない本心自然と出ていた。

そう、叶うはずのない言葉。
真田のテーピングを鞄にいれ俺は部室を出た。

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