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□勉強よりバスケ、バスケより×××
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暖房のきいていない部屋で私はあたたかいお茶を喉に流し込んだ。目の前の男はこんな気温なのに半袖だった。
「だぁーっ!終わんねーよ!!もう!」
「テストでそんな点取るあんたが悪い」
「…うるせーよ、」
いきなり声を小さくする火神に私は言い過ぎたかな?と首を傾げた。少々涙目の火神は必死に出されたプリントと格闘する。
「あは、火神がプリントに泣かされてやんの」
私がそう言うと火神はきゅっと眉根をひそめてこちらを睨んだ。そんなに数学が嫌いかよ。
なんとなく頑張っている火神を目の端に入れながら、私は少し優しくしてやろうと思った。
「バスケしに行く?勿論息抜きでだけど」
「マジか!?行っていいのかよ!?」
「私の監視付きですけどー」
「いい!それじゃ早速行こうぜ!」
さっきの態度とは全く打って違い、瞳を輝かせながらガタリと椅子から立ち上がった。そうすればいきなり手を引かれてバスケットコートのある公園までひとっ走りさせられた。
「きっつ……馬鹿じゃないの…このバカガミ」
「いや、だってよ、バスケがしたかったからさ」
「分かったからしておいでよ」
私はここで待ってるから、と言うのが早いか遅いか、火神はバスケットボールを持ってコートに飛び込んで行った。
フェンスに寄りかかり、走っていく火神の背中を見ていると段々眠くなってきた。こんなに寒いのに。嗚呼、でも睡魔には勝てない――…。