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□君が僕を呼ぶ甘美な瞬間
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今日は待ちに待った入学式……なのだが待ちに待っているのは今年から入学する新入生だけであって、
3年にもなると寧ろ懐かしく思え、逆に来年はこの風景を見られなくなると思い少し寂しくなる。
そんな物悲しい雰囲気をぶち壊しにするのは自分と同じように目立つ髪の毛の色をした奴ら。
黄瀬が
「たまにはみんなで弁当食べようっス!!」
なんて言ってきたからなんとなく皆も賛成して結果思いの外大勢になってしまった。
「しっかし外すげぇな。当分帰れねーぞ」
「うっわ、マジっスね……今日こそは早く帰ろうと思ってたに…」
今日は入学式があるため体育館は使えず、そのため部活が珍しく無いのだ。
青峰と黄瀬は早く帰りたいのか、窓の外をチラチラと見ている。
「食べ終わったなら机戻そうか」
自分が発したその一言で周りがガタガタと机を元の場所に戻し始める。
するとそこに……
『征ちゃん!!』
「……っ!?」
まさか、いるわけがない。いや、でもあの声は間違いない。
「名前……」
「どうしたんスか?『征ちゃん!!』」
黄瀬の質問に被さるようにして現れたのは、
自分と同じ真っ赤な髪を腰まで伸ばし、
桃井と同じ、帝光の制服を着た、
一人の女の子だった。
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