あの日のキスを

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―木吉となまえが別れた―

そんな噂は一切無いような位私と鉄平は普通の毎日を送っていた。

でも、リコなんかは気付いているに違いない。

だがリコがその事を言わない優しさにとても感謝した。


いつからか、鉄平が辛そうな顔をするようになった。

この学校のバスケ部はかなり練習がハードだ。

そのため、恋人達の時間はバスケに費やされる。

私はそれを承知の上で鉄平と付き合ってたのに、

鉄平は私との時間が削られるたびに辛そうな顔をして、謝るようになった。


―違う―


鉄平にこんな顔をさせたいんじゃない。


―ねぇ、てっぺ……―


わ か れ よ う


すき、好きだよ。鉄平。


鉄平はバスケが好きで、それと同じくらい私の事を愛してくれてる。

どっちかなんて選べないんだ。


だったら―

鉄平はバスケを選んで―、私は大丈夫。


私のためにバスケをやめないで。



『てっぺ、帰ろ』

「……おう」


いつもは自然と手を繋ぐのに、今日は繋がない。


―あぁ、わたしたち、別れたんだっけ―





『バイバイ』

「おうっ!!」


いつものようになまえと帰った。いつものように下らない話をして……

唯一、前と変わった事と言えば―、


―手を、繋がなくなった―


それが、俺と、なまえが別れたことを痛感させる。


分かってた。二人の時間が削られる度になまえは

―謝らないで―

と、言っていた。

俺はバスケが好きだし、なまえも好きだ。


ただ、どちらが大切かと問われれば……

答えられない。


―それが、いけなかったんだ―


もう後悔しても、しきれない。

―なまえは、もう恋人じゃないんだ―


なまえが家に入る瞬間、いつもの癖でなまえの肩を掴む。


―そう、キスの合図だ―


それをやった瞬間、俺はとてつもなく後悔した。


なまえは俺の恋人じゃ無いんだ。


『キス、したいの?』

「あっ、あぁ……」


思いがけずなまえは俺の要望を聞き入れてくれた。


なぁ、やっぱり別れたのは嘘だよな?


ゆっくりと瞳を閉じるとなまえの唇が俺のソレ―


ではなく、頬に押し付けられた。


「なっ、」

『ごめんね、』

驚く俺に構わず、なまえは家に入る。

その時俺は確信した。

―本当に、終わってしまったんだ―



二回目のキス



それは、友達に戻った証拠



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