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□腹黒王子と召し使い
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『いま、よしっ先輩……』
「おぉ、今日は随分遅かったやないか」
どないしたん?と聞いてくる今吉先輩の手には私の探していたもの……よく見慣れたお弁当箱があった。
『かえ、して下さい……』
「せやかて、もう結構食べてしもうてるし……」
じゃあ食べなきゃ良いじゃないですか。
出そうになった言葉を飲み込む。
「しかし名前の弁当小さいなぁ。ワシ、こんなんじゃ足らんわぁ」
当たり前だ。部活をやっている体育会系な男性と、ヒョロヒョロの帰宅部の私とじゃ食べる量が違いすぎる。
『なん、でお弁当とるんですかぁ……』
部活はやってないし、特に授業を楽しいと思わない私が唯一楽しみにしているのはお弁当の時間だけと言っても良いのに……
私はもう何日自分のお弁当を食べていないのだろうか。
「スマン、スマン。名前の弁当が旨そうやったから」
代わりにこれやるで
と言って差し出されたのは私のお弁当箱なんかよりはるかに大きいお弁当箱。
『……自分のお弁当持ってるじゃないですか!!』
しかもこんないっぱいもらっても食べきれないし!!
色々言いたいことがあるけど、どうせ言ったって口で勝てる気がしない。
私は素直に今吉先輩のお弁当に手をつけた。
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