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□愛してるが悲しく聞こえた
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心が枯れるくらいに愛したと思う。でもそれは一方的な思いで彼は気付いてるはずなのににこにこと胡散臭い笑みを貼り付けて自分に接していた。
正直そんな態度は止めて欲しかった。優しく頭を撫でる仕草もさり気なく眼鏡をとったりする行動も、全部、全部好きになってしまうから。

「卒業ですね、先輩」

「せやな。苗字は今年受験生やんか。大変やなぁ」

「頑張りますよ、今吉先輩も頑張ってください」

「ん、ありがとな」

そうやって眼鏡の奥で瞳がきゅってなるのが好きで、頭をこうやって撫でてくれるのが愛おしくて、涙が、出そうになった。
多分また会えるかもしれないけど大学を一緒にするわけでもないし、告白もするつもりもないし、多分、きっと会えなくなるかもしれないから、悲しくて泣きそうになった。
全然咲いてもいない桜の木の下で私は笑みを作った。きっと見抜かれていると思うけど、諦められますように、これで終われますように、って。

「ありがとう、ございました。先輩、また、いつか」

そうやって、泣きそうな震えた声で。

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