short

□くれますか
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愛してるだとか愛してないだとかどうでも良くて、ただ目の前にいる男に好きだと告げられ告げれればそれで良かった。顔を赤くして互いに見つめ合って少し照れて顔を背けて、そんなので良かった。

「緑間ー、」

いつのまにか名字で互いに呼び合うようになった。恋人らしく二人で会わなくなった、手を繋がなくなった、キスをしなくなった、好きと言わなくなった、抱き合わなくなった、目を合わせなくなった、話さなくなった、それで、それで。
気付いたら自然に消えてなくなっていた。ずっと好きだよって言ったのは嘘じゃなかった。きっとアイツが言った俺もずっと好きだっていうのも嘘じゃなくて。でも本当にならなかったその言葉はいつか遠い昔の嘘になった。
なんで消えちゃったの?私が嫌いになったから?私が嫌だったから?私に飽きたから?別に好きな人が出来たから?
それは分からなかった、誰にも。私もいつのまにか握っていた手を離したのは確かだった。ちゃんとばいばいって、さよならをすれば良かった。もう一度強く彼の手を握って離して、それで目を見てばいばい、と。

そう告げればきっと今こんなこと考えなかったのだ。こんな、今更なことを。


こんなことを考えている私をまた君は馬鹿だと言ってくれますか

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