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□君の笑顔があまりにも残酷で、
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黄瀬のことをただの幼なじみだと思っていたのが小学六年生までの話。いや、もうちょっと早かったかもしれない。
中学生になってバスケを始めて、傍らにモデル業なんかして、幼なじみが出てくる幕はなくなった。
彼を異性だと意識するたびに胸が締め付けられて、苦しくて、どうしようもなく溝を感じて悲しくなった。
            「黄瀬、好きだよ、」

名前を呼ぶ声が震えた。怖かった。軽蔑されるかもしれない、嫌われるかもしれない。そんな風に怯えながら私が紡いだ言葉に彼は笑いながら答えた。

「俺もっスよ、名前っち!」

泣きたくなった。彼は昔と何も変わらないまま成長しているのだ。
何も変わらないその笑顔で、私を苦しめる彼が恨めしかった。

「……好きじゃ、ないくせに」

小さく押しつぶした感情はもう消えた。声を殺して、叫びたくなる衝動を抑えて、この涙が止まるまでの間、せめて愛させて、と。


君の笑顔があまりにも残酷で、
(そんな顔で好きだなんて言わないで)



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