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□キスして、ほしかったのに
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「好きですっ!!伊月先輩!!」
最 悪 だ
持っていた箸を落としてしまったが、そんなことどうでも良い。
―今日は良い天気だなぁ―
なんて思いながら裏庭を見た私を殴りたい。
人気の無い裏庭に珍しく二人いて、
おー告白か、頑張れよ
なんて思ってた私を誰か殴ってくれ。
よりによってなんで伊月なんだよ。
最初の叫び声以外は何を言っているか聞こえない。チクショウ、もっと耳をダンボにしろ自分。
彼女の方は私に背を向けてるからどんな子か分からないけど、多分私なんかより全然可愛いんだろうなぁ
―ズキリ―
心臓が痛い。
ヤメテ、伊月断って
『……馬鹿らし』
思った矢先後悔した。性格悪いぞ自分。
別に伊月が誰と付き合おうと私には、
『関係、ないっ、じゃん』
やめだやめだ箸を洗ってお弁当を食べよう。
窓から視線を外そうとした瞬間、見えたのだ。
―伊月が女の子と抱き合っている所を―
『っつ!!』
なんだか涙が出てきたので、私は教室から走り去った。
―抱き合っている伊月と目があった気がしたのは、気のせいだ―
背中を壁に預けてその場にへたりこむ。
心臓のドキドキが外に聞こえるんじゃないかってくらい激しく動く。
息も苦しくてでもそれは走ってきたせいだけじゃなくて。
やばい、どうしよう。
気づいてしまった。気づかされてしまった。
伊月が、好き。
どうしようもないくらい。
壊れるんじゃないかってくらい苦しくて、叶わないと思うと切なくて。
胸に手を当てて目をつぶったら、伊月の顔が浮かんでもっと切なくなった。
「なに逃げてくれてんの?」
『伊月……』
目を開けると、廊下の先に伊月が立っていた。
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