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□だいっきらい、と呟いた
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俺の姿を見るなり、名前も知らない女子はそそくさと退散して行った。
名前っち、さっきの言葉は、嘘っスよね?
お願いだから、笑顔で、違うよって言ってよ。
『黄瀬、』
ピクリ、指先が動く。
手に力が入らない。
彼女は数秒俺の顔を見た後、フワリと笑った。
そして、―
『だいっきらい』
と言ったんだ。
その後は俺も記憶が曖昧だ。
変な言い訳を言いながら、ただひたすら走った。
「うっ、くっ、うぇっ、」
ごめん、ずっと、君は無理してたんだね。
俺が、側に居たからなんだね。
俺は、好きになってはいけない人を好きになってしまったみたいっス。
どうしたら、君はあの頃に戻ってくれるの?
何がいけなかったの?何が君を追い詰めてたの?
神様、どうか、一つだけ、
彼女が俺を好きになってくれなくても良いから、
俺は彼女を好きでいて良いですか?
「大好き、っス」
もう、二度と言うことは無いだろうから、
せめて、今だけは、言わせて。
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