木の葉の里の転生少女
□1章
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キィィィィー!!
車のブレーキ音が空に響く。
私がはっと音が発せられている方向を向いたその時…
私の体は宙に投げ出された。
即死だったらしい。痛みも感じる暇もないほどにあっさりと。
生々しい色をした血液が私の体から徐々に広がっていくのを、私はどこか他人事のように見ていた。
魂を失い、最早肉塊となってしまった、私だった物を見下ろす。
悲しみも何も浮かんではこなかった。
ああ、死んだのか、自分は。
と、ただ納得しただけだった。
すると、私を轢いた車から慌てたように人が降りてくるのが見えた。
急いで何処かに電話を掛けているようだ。
恐らく救急車でも呼んでいるのだろう。
その顔はまさに顔面蒼白。
彼には悪いが私はもう助かりそうにない。
現に今、この体(魂といったほうがいいだろうか)は何かに引っ張られるように上空へと昇っていく。
ただひとつ、心残りといえば…
拓也…ごめん…
私のたった一人の家族であり、大切な弟…。
でもあの子は強い子だから。
私がいなくても生きていくことができるだろう。
少しは悲しませてしまうかもしれないけれど。
あの子はきっと立ち直ってくれると信じている。
そして…幸せな家庭をつくってほしい。
私たちは決して幸せとはいえない人生を過ごしてきた。
先に死んでしまった私のぶんまで、たくさん幸せになってほしい。
徐々に意識が遠くなっていく…
それはまるでなにかとても暖かなものに包まれていくようで。
わたしはフッと小さな笑みを浮かべながら、意識を手放した。