短編小説置場。

□甘口コメンテーター
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「ご主人様、僕見たですの!ご主人様はジェイドさんにニンジンを食べて貰おうとしてたですの!」

好き嫌いしちゃ駄目なんですの!と誰かの受け売りのように話す、湧いて出てきた小動物。
どうやら先程の光景よりも、食事を残そうとすることに気が向いたようだ。
だがルークとしてはそうはいかないだろう。
見られたのだ。
相手の視点が別の方に向いていたとしても、見られたことに違いはないのだ。

「っ、るっせーブタザル!音沙汰もなく帰ってくるんじゃねー!!」
「みゅみゅ、ご主人様何で怒るですの〜?」

怒りの意味に気付けない聖獣に、わめくその主人。
その光景を尻目に、傍らではジェイドが肩を震わせながら笑っていて。

「あんたはあんたで笑ってんじゃねぇぇぇ!!」
「っ、失礼。…ですが…くく、ははは!」

からかわれていたことにルークはようやく気付いた。
それに対する怒りも覚えたが、それ以上に恥ずかしさが止まらない彼は真っ赤な顔を隠すために頭を抱えた。

しかし、こんなに大きな声を立てて笑っているジェイドを見たのは初めてだ。

普段からそんな日はないという位にルークをからかっていると言うのに、一体何がそんなにも愉快だったのか。
ルークには勿論分からないことだった。

地面にはスプーンと、カレー色を帯びた人参が寂しげに横たわっている。



残すどころか地面に落としたとあって、ルークは帰ってきた女性たち…特にナタリアに思いっきり絞られていた。
元々の原因はジェイドにあるのだが、食べさせようとしていた結果ああなったとは流石に言えなかったらしい。
恥ずかしい思いはミュウ相手だけで一杯一杯なのだろう。
…キャンプ地に集まった仲間に自分達の様子を見られた時点で、四人とも何かがあったとは気付いているとは思うのだが。
従姉弟の説教から解放された彼に近寄って行き、とどめとばかりに一言耳元で囁く。
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