短編小説置場。

□甘口コメンテーター
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「さて…どうします?」

笑顔のままジェイドが問い詰める。
どうしよう、と心で呟きながらルークが言葉に詰まる。
そして笑顔の人が返答を待つ間を使って、必死に考えた。



食べて貰えるのならばそれに越したことはないし、何より嬉しい。
だが自分が食べさせるなんて。
そんな光景を他の誰かに見られでもしたら恥ずかしさで今日一日は仲間の傍を歩けないだろう。

…でも、今のルークにとっては目の前の赤い物体はそれ以上に脅威だ。

誰かが帰ってくる前に、全てこの男の口に放り込んでしまえばいい。
考えると、自分自身でこの小さな赤い悪魔を口にするよりも簡単な事なんじゃないのかとルークは思えてきて。
少し乱暴に人参を二個ほど、スプーンで掬う。
これを入れて後五回くらいでそれは皿から全て姿を消してしまいそうだ。
何だか気が楽になった。
ゆっくりと、弧を描いている口へとそれを運ぶ。
顔が熱っぽく感じたが、それが何なのかは今のルークには知る由もない。

「……ほら」

自分でも震えていると分かる声を、蚊の鳴くような大きさで出した。
そんなルークにジェイドはより一層笑みを深めてから、小さく口を開いてそれを口に含もうと――。
…だが。

「ご主人様ー!」
「どおわぁぁぁぁっ!!」

この場に響くはずのないよく通る大きな声に、ルークの体は跳ね上がって思わず後ずさりした。
その衝撃で尻餅をついたようだが、本人はそれどころではないようだ。
それもそのはず。
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