短編小説置場。

□甘口コメンテーター
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ふてくされたルークはこちらに背を向けるように向きを変えた。
彼はそれで会話を断絶させたと思っているだろうが、そうはいかないのがこの大佐。

「食べてあげますよ、条件付ですが」

その意外な一言にルークは先程向きを変えたにも関わらず、また勢いよく振り返った。
予想通りの反応にジェイドは思わず吹き出しそうになるが何とか堪えて。

「……って、何だよ条件って」

『食べてあげる』の部分に真っ先に反応して振り返ったのだろう。
だが目の前に座る男の言葉を最後まで聞き終えると、あからさまな疑いのまなざしを向けた。
それはその条件が充分に怪しい内容であるだろうことを彼が今までの経験から悟った為で。
…振り返った時点で既にジェイドの術中に落ちているのだと言うことは、まだ気付かないようだが。
ジェイドはそんなルークの言葉に、見るからに楽しそうな笑顔を浮かべて。

「簡単なことです。貴方が私にそれを食べさせてもらえるのならば、食べてあげます」
「ああ何だよそんなことか、って」


……はぁ!?


人の話は最後まで聞いてから、反応を返すようにして欲しいものだ。
先程から何かと先走りの多い赤毛の見た目青年にジェイドはそう思った。
もっとも、その反応が見たいためにわざわざややこしい口ぶりをするのだが。
そんな大人な男の思惑など知りもせず、ルークは言われたことを実行する図をイメージして一人顔を真っ赤に染めていた。

「たべ、食べさせるって、あんた、何言って…!」
「最近手を酷使しすぎたせいか腱鞘炎気味でしてねぇ。余計な負担はかけたくないのですよ」

いつどこで手を酷使していたのか問いただしてみたいところだが、相手がジェイドではそれも無駄な足掻きで。
実際そうなのかもしれないしと考えたのだろう。
ルークは何も言わず、視線を宙に彷徨わせていた。
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