短編小説置場。
□five senses.
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five senses.
晴天。快晴。雲ひとつない空。
今日の空模様はそんな言葉がよく似合う。
急ぎの旅だからこそ、こういう日に進める分だけ進むことが大切なのは仲間の全員が承知していた。
しかしそれでも戦士達に休息というのは欠かせないもの。
そのようなことを言って、パーティ内年長者であるジェイドが休憩を提案したことにより一行は少しの間休憩となった。
今日の目的地であったタタル渓谷にはセレニアの花が咲く場所がある。
そこは丁度モンスターも近寄ってこない場所で、仲間たちはまるで遠足気分。
ティアとナタリアはミュウを連れてセレニアの花を使って冠作りを楽しんでいる。
アニスもそれに参加していたが、やがて物珍しい色をした蝶を見つけると顔色を変えてそれを追い掛け回し始めた。
確か前にも似たようなことがあったはずなのだが…懲りていないのだろうか。
少し不安ではあったが、ガイがそんなアニスを見かねて彼女の後をついて行っているのでまず安心だろう。
ジェイドは近場の岩を背もたれとし、地面に腰を下ろして本を開いている。
そしてその隣にはすることもなく手持ち無沙汰なルーク。
似たような体勢でどこか遠くを見つめていたが、だんだんとその体がこちらに倒れて来ていることにジェイドが気付く。
「…ルーク?」
「んー……」
呼びかけて返ってくるのは生返事。
ずるずるずる、と滑り落ちて最終的に自分の肩に寄りかかる形となった。
「こんなところで寝ては風邪を引きますよ」
「……んー…」
単調なその返事にジェイドは思わず苦笑した。
太陽が温かく照らしているとは言え、ここは渓谷。