短編小説置場。

□そしてあなたは今も
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ある意味台風のようなその男はさっさと部屋を出て行った。
残されたのはもちろんこの部屋の主であるジェイドただ一人。

「……それでは手紙の意味がないでしょう」

知らないうちに頭を抱えながら呟いていた。
全くもって主君の考えていることは理解しがたい。

…結局、今日の休憩時間も無駄に過ごしてしまった。

渋々ながらも再び仕事用の椅子へと腰を下ろし、残った書類へと手を伸ばす。
しかしそれは、ただ書類を手元に引き寄せたと言う行為までにしか及ばなくて。

引き寄せた後すぐに机に肘を突いて考え込むような格好になった。


…どうしているか、なんて大体想像がつく。


レプリカだと知った上で彼を迎え入れた公爵たち。
しかし、それでも屋敷の大半の者は彼をまともな「人間」を見る目で見ていないだろう。
まるで元に戻ったような、それ以上に狭いかもしれない閉鎖された環境。
そんな中でまた腐った考えを巡らせているのがオチだ。

きっと、今この瞬間でさえも。

「…………ルーク」

意識してでも出すまいとしていたその名前が自然と口から漏れた時、胸の奥が微かにじわりと熱くなった。
だから嫌だったのにと、心にいつの間にか居座っていたもう一人の自分にため息を吐いた。




これ以上もないと言うくらい、自分がどうしようもなく滑稽に思えた。


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