短編小説置場。
□そしてあなたは今も
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「しかしあれからもう半月か」
何をそんなあっさりと。
その話題に微かに顔を顰めたが、向こうからは背を向けているこちらの表情は見えないのでそれを隠すことはしない。
「ルークは元気にしているのか?」
「何故それを私に聞くんです。そんなことはガイにでも聞けば良いでしょう」
心なしか強い口調で返してしまったことに、ジェイドは内心舌打ちをしたい気分に陥る。
恐らく上司で幼馴染で一応親友な彼はこういう反応を返すだろうと分かっていてあえて自分に尋ねたのだ。
…そうでなければ今正にふははは!と大きな声で笑うわけがない。
「ガイラルディアにも聞いたさ。だがアイツもルークが今何をしているのか知らないらしくてな」
「そうですか、なら私に聞くだけ無駄でしたね。ガイ以上に彼のことを把握している人間はいないでしょうに」
してやったりの表情をする相手が今日はやけに癪に障る。
(話題が話題だからか)
少々言葉の中に含まれる毒が多くなってきているような気がするが、そこはあえて無視して。
「それもそうか。…確かガイラルディアは手紙を書いたとも言っていたな」
やりかねませんね、と十分に蒸らした紅茶を暖めていたカップに注ぎながら相槌を打つ。
あの過保護な元使用人ならそれくらいしているだろう。
…と、ここでこの後に続くのがどんな話題なのか何となく想像がついてしまった。
「お前は書いていないのか?」
やはり。
「…書きませんよ」
少量紅茶を口に含み、飲み下した後にきっぱりと言った。
薄情な奴だなー、と向こうは正直な感想を漏らして。