短編小説置場。

□ほしいのは、ただひとつ。
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「じぇ、ジェイド…」
「人の隣でくだらない事を考えて、勝手に辛気臭い顔をしているからです」
「なっ、誰もくだらない事なんて考えてないって!」

くだらない事、と言う単語に思わず過剰反応する。
そんな様子にやれやれ…と前の肩が少し竦められたのが見える。
そして。

「して欲しいと思うことをもっと素直におねだりするような可愛げを、もう少しもって欲しいものですね」

閉口した。
…それ以外に何の反応も返しようがなかったから。

「…して欲しかったのでしょう?」

その言葉に大きく目を見開いて…やがて、拗ねた様な目つきに変える。
もちろん、それはただの照れ隠しに過ぎないのだが。

「分かってたのかよ…」
「あんなに羨ましそうな目でカップルを見つめていたら、誰でも気付いてしまいますよ」
「…悪かったな」
「いえいえ、貴方のもの欲しそうな目がとても可愛らしくてよかったですよ」
「………趣味悪いぞ」
「おや?それはまた心外ですねぇ」

街行く人々の視線が少しずつ此方に集まってきている。
少し気になったが、そんな会話を続けているうちにまぁいいか…と思っている自分がいたりして。

「…つか、ジェイド何か繋ぎ方間違ってねぇ?」

それでもジェイドとの間に生じた気まずさは誤魔化せなくて、ふと思ったことを口に出した。

双方の指を交差するように絡めて。
まだ小さい頃に幼馴染としたような簡単なものとは違う。
比にならないくらい、もっと強く強く縫い付けられて……離さない、とでも言うようなそれ。
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