短編小説置場。

□ほしいのは、ただひとつ。
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そんな二人が手を繋いで街中を歩くなんて、周りの人々から見たらどんなに奇異か。
それでもルークの頭では…手を繋ぐのは仲の良い証。
そう解釈している為にそれをしてみたいと思うのは極自然のこと。
逆にすることが出来ないと、やはり自分とジェイドはそんな関係じゃないんじゃないかと思ってしまう。

再び遠くの方を歩くカップルへと視線を戻す。
その光景から目を離すことが出来ずにいた。

………羨ましい……

心の中で呟いた後に、我に返ったルークは慌てて首を横に振りそのことを否定する。
何てわがままな。
自分でも分かるくらいに、傲慢。


そうだ。


そもそも自分が何か…よりにもよって愛情の行為を求めるなんて。
そんなこと、許されるわけがない。
自分はレプリカなんだから。
本来なら存在して良い訳がないのだから。
こうやって穏やかな場所を与えられているだけでも有り難いのだから。
その上、傍に居てくれる人も居る。
それだけで充分じゃないか。

そう、それだけで―…

「ルーク、どうしました?」

声を掛けられて、漸く頭が本当の世界に帰って来た。
顔を隣の方へ向けるとそこには少し怪訝そうな顔をしたジェイドがいて。

「え、あっ……いや、別に?」
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