短編小説置場。
□ほしいのは、ただひとつ。
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傍から見ると仲が良いのか悪いのか分からないかもしれないが、そこには確かな安らぎがあった。
そう…『恋人同士』と言う名の。
だが安らぎがある反面、何か別のもやもやした嫌な感覚があることをルークは自覚していた。
恋人と言っても、歳が一回り上の敵国軍人の男は以前と特に何の様子の変化もない。
それが原因なのだろうと思う。
好きだと言ったのは自分からだった。
…実際のところはジェイドに『言わされた』のだが、それに気付くほどルークは鋭くはない。
なのでルークが彼の気持ちに気付ける訳もなく。
少し、不安だった。
変わったことではっきりと言えるのは…今まで以上に、自分がジェイドを意識していること。
それだけ想いが募っていく分、余計にそんなことを考えてしまうのかもしれない。
女じゃあるまいし何でこんなに女々しいこと考えないといけないんだと、自然と肩が下がった。
(……ん?)
そんな時何気なくルークの視界に入った、一組の男女。
いかにもラブラブと言わんばかりにその身を寄せ合いながら歩いていた。
…手を絡めながら。
(恋人同士、か…)
そう解釈した後、何となく隣の人間の様子を目線だけで伺ってみる。
いつもと変わらない、何を笑っているのか分からない薄笑いを浮かべたジェイドが歩いている。
歩調を合わせてくれているのか、旅路を歩いている際の速度とは比にならないくらいの遅さ。
そう言ったところに彼の優しさを感じるのは確か。
しかし。
(手…繋いだこと、ないな)
当たり前と言えば当たり前なのだが。
大の大人と、中身はまだ7歳と言えど見た目は青年の自分。